2013年11月01日 18:21 弁護士ドットコム
「孤独死」が社会問題化して久しいが、「誰にも相続されない遺産」の額もまた、年々増えている。2012年度、相続人がおらず国庫に入った財産の総額は375億円にのぼり、2001年度の107億円と比べ大幅に増加。1992年度以降の最高額を更新したと朝日新聞が報じている。
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身寄りがないなど、亡くなった人の財産を誰が相続するのかハッキリしない場合、裁判所が選任した「相続財産管理人」が財産を整理し、残った分を国庫に入れる。その総額が375億円(2012年度)というわけだ。
この相続財産管理人、具体的にはどのような役割を担うのだろうか。また、身寄りのない人が遺産の使い道を指定したい場合、どうすれば良いのか。愛知県弁護士会高齢者・障害者総合支援センター運営委員会の委員をつとめる平野由梨弁護士に話を聞いた。
「相続財産管理人の役割は、相続人が存在するかどうか不明な遺産を適正に管理し、清算することです。資格制度はなく、案件に応じて、公正中立に業務を行える適任者が選ばれることになります。
具体的な役割としては、相続人が存在するかを確認するとともに、家庭裁判所に報告をしながら、債権者に弁済をしたり、弁済をするために財産を換金するなど、財産の管理・清算を行います。そして、相続人が存在しないことが確定したケースで、清算後に残った財産がある場合は、それを国に帰属させます(国庫に入れる)」
それでは、相続人が存在しないことが確定した場合は、清算後の財産は、常に国に入ることになるのだろうか?
「法律で決められた期間内に、被相続人と特別の縁故があったと主張する方に対し、家庭裁判所が相続財産の全部又は一部を分与することができるという制度があります。
この特別縁故者に当たる方の例としては、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者などが、民法で規定されています。
この制度は《被相続人は、ご自身と特別の縁故があった方に、財産を相続させることを望んでいる》という考えで、設けられた制度です」
では、相続人がいない人が「自分の財産が死後、どう使われるのか決めておきたい」と考えた場合、どんな手段があるのだろうか。
「そうした場合、遺言書を作成したり、信託制度を利用することによって、誰(法人を含む)にどれだけの遺産を渡すかを決めておくことができます。このような方法を取ることで、生前お世話になった方や活動を支援したい団体等に遺産を残すことができます」
平野弁護士はこう説明する。世間には「終活」(人生の終わりをより良く迎えるための活動)などという言葉まで登場しているようだが、遺産や遺言について考えることも、その一環と言えるのかもしれない。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
平野 由梨(ひらの・ゆり)弁護士
藍法律事務所所長弁護士。愛知県弁護士会高齢者・障害者総合支援センター運営委員会委員。名古屋市障害者・高齢者権利擁護センター事業運営委員会委員。
事務所名:藍法律事務所
事務所URL:http://www.ai-law.jp