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「業務上過失致死罪」と「過失致死罪」 なぜ罰則の重さが大きく違うのか?

2013年10月31日 16:50  弁護士ドットコム

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京都の花火大会での屋台爆発、福岡の整形外科医院の火災、焼き肉チェーンの起こした集団食中毒……。重大な事故が起きるたび、ニュースで「業務上過失致死傷罪」という言葉が繰り返される。


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一方、日本の刑法には、「業務上」という冠がつかない「過失致死罪」や「過失傷害罪」も存在する。実は「業務上」がつくかどうかで、法定刑は大きく異なる。業務上過失致死傷罪が《5年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金》という刑なのに対して、過失致死罪は《50万円以下の罰金》、過失傷害罪は《30万円以下の罰金》とずいぶんと違うのだ。



なぜ「業務上」がつくかつかないかで、罰則にこれほどまでの差が生じるのだろうか。田沢剛弁護士に解説してもらった。



●「業務上」は「職業上」よりも広い意味


「まず、条文を紹介します。刑法211条1項前段は『業務上必要な注意を怠り、よって、人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する』と定めています。これが『業務上過失致死傷罪』です。



業務というと、職業としての仕事を指しているようにも思いますが、ここでの意味はそれよりも広く、《人が社会生活を維持する上において、継続して従事する仕事》という意味です。収入を得るための職業には限らず、営利目的である必要もありません」



田沢弁護士はこのように説明する。「継続して従事する仕事」という点がキーポイントと言えそうだ。では、なぜ「業務上」だと罪が重くなるのだろうか。



「重く処罰される根拠について、一般的には、《業務者には、通常人と異なった特別に高度な注意義務が課せられており、その高度な注意義務に違反するから》と説明されています。



ただ、異なる考え方もあります。それは、同じ行為に対して要求されるべき注意義務の内容は、業務者であるか非業務者であるかにかかわらず、本来は同一である、というものです。



この見解に基づいた場合、業務者と非業務者とでは、もともとその注意能力に差があるため、《その能力に応じて責任の重さが違う》という説明になります」



かなり立ち入った話になったが、「業務上」という点について、法律家の間ではこんな風に考えられているということだ。田沢弁護士は続ける。



●「仕事中に注意を怠った」という意味ではない


「なお、『業務上過失致死傷罪』に問われるのは、あくまで業務上必要な注意、言い換えると《業務との関連で要求される注意》を怠った場合です。これは、業務中に注意を怠ったという意味ではありません」



そうすると、たとえば『仕事中、道を歩いていて、つまずいた拍子に誰かにケガをさせてしまった場合』はどうなるのだろうか?



「『道を歩く』という行為は、一般的な人間の行動様式に過ぎません。つまずかないように注意する義務は、誰に対しても課せられるものですから、違反しても重く処罰される根拠がありません。



つまりこの場合、高度な注意義務がある『継続して従事する仕事』に関連して起こした事故ではなく、業務上過失致傷罪には該当しません」



田沢弁護士はこのように説明を締めくくった。結論としては、継続して従事する仕事といえる場合、事故を起こせば重大な責任を問われる可能性がある、ということだ。この点は、しっかりと覚えておいたほうがいいだろう。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
田沢 剛(たざわ・たけし)弁護士
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後、新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。
事務所名:新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
事務所URL:http://www.uc-law.jp