2013年10月30日 18:40 弁護士ドットコム
タレントみのもんたさんの次男が酔っ払った男性からキャッシュカードを盗み、現金を引き出そうとした疑いで逮捕された事件。批判の矛先はみのさんにも向かい、結局、司会を務めていたTBSの情報番組「朝ズバッ!」を降板する事態に発展した。
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そのきっかけとなった次男自身は、キャッシュカードが入ったバッグを盗んだことを取調べで認め、起訴猶予となったが、勤務先の日本テレビから「諭旨解雇」された。同社広報の説明によると、諭旨解雇の理由は「本人に経緯を聞き、就業規則に抵触する事実が分かったため」ということだ。
この「諭旨解雇」という処分は、社員が不祥事を起こしたときに目にするが、どんなときに行われるものなのだろうか。懲戒解雇や辞職とはどう違うのか。労働問題にくわしい靱(うつぼ)純也弁護士に聞いた。
「諭旨解雇は使用者が行う懲戒処分の一つです。懲戒解雇の場合は退職金などが支給されないことが多いのに対し、諭旨解雇の場合はその全部または一部が支給されるなど、懲戒解雇と比べて従業員が被る不利益が緩やかになっています。
ただし、諭旨解雇による退職はあくまで懲戒処分ですから、退職金などが支給される場合でも、従業員が自ら辞める場合(依願退職)とは異なります」
諭旨解雇を行うための条件は決まっているのだろうか?
「諭旨解雇も、懲戒処分として従業員を失職させる点では懲戒解雇と同じです。したがって、その手続きや有効性は懲戒解雇と同様に、法律の規制を受けています。
諭旨解雇処分を行うには、あらかじめ就業規則に諭旨解雇事由が定めされていることはもちろん、少なくとも従業員本人に弁明の機会が与えられていることなどが必要です。
また、諭旨解雇は、その原因となった行為の態様や業務に及ぼす影響などに照らし、制裁として従業員を排除しなければならないほど、重大なものであること(解雇の相当性)も必要です」
つまり、いくら従業員に落ち度があったしても、会社側が一方的に従業員を解雇する際には、一定の条件をクリアしなければならないということだ。たとえば、どんなケースで諭旨解雇が認められ、どんな場合に認められなかったのだろうか?
「セクハラなどの場合は比較的、諭旨解雇が有効と認められやすいようです。しかし、タクシー会社が運転手のスピード違反等を理由に行った諭旨解雇や、上司への暴行から7年後に行われた諭旨解雇が無効とされた例があります。
なお、就業規則に、懲戒解雇や諭旨解雇の場合は退職金を支給しないと規定してある場合でも、実際に退職金を不支給とできるのは、それまでの勤続の功を抹消・減殺するほど著しく信義に反する行為があるときに限定されることに注意する必要があります」
このように諭旨解雇は、懲戒解雇よりも緩やかな処分であるとはいえ、会社が懲戒処分として従業員を解雇するのだから、それにふさわしい条件を満たす必要があるということだろう。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
靱 純也(うつぼ・じゅんや)弁護士
大手銀行、製薬会社勤務を経て2004年弁護士登録。交通事故、労働事件、債務整理、企業法務などに幅広く対応。気軽に相談できる弁護士を目指し無料法律相談に力をいれている。
事務所名:あゆみ法律事務所
事務所URL:http://www.ayumi-legal.jp/