2013年10月24日 17:31 弁護士ドットコム
例年、チケット争奪戦となるプロ野球・日本シリーズ。今年は巨人対楽天となったが、楽天はシリーズ初進出であるうえに、Kスタ宮城は観客収容人数が少ないため、10月25日販売開始のチケットを入手するのは容易ではなさそうだ。
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こういうときに「暗躍」するのがチケットの転売屋、いわゆる「ダフ屋」である。ダフ屋行為は違法、という話も聞くが、それでもコンサートや試合会場付近で「あまったチケット買うよー。ない人売るよー」と声をかける人を見かけることがある。
だが、素朴に考えると、安く仕入れて高く売るのは商売の基本だし、需要に応じて価格が変わるのも市場の基本。ネットオークションなどでも、限定グッズなどがプレミア価格で転売されているのを見かけることがある。合法的な転売と、違法なダフ屋との違いはどこにあるのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。
「こうしたダフ屋行為が禁止されているのは、それが伝統的に暴力団の資金源になってきたこととも関係していると思います」
秋山弁護士はこのように指摘する。具体的には、どんな形で禁止されているのだろうか。
「ダフ屋行為は都道府県の条例で規制されています。
たとえば、東京都の迷惑防止条例では、(1)不特定の者に転売する目的で公共の場所において入場券等を購入する行為や、(2)転売目的で得た入場券等を公共の場所において不特定の者に売る行為、を禁止しています。
違反した場合には2年以下の懲役・100万円以下の罰金(常習の場合)という罰則が用意されています」
この説明は「東京都条例」についてだが、いわゆるダフ屋行為を禁止する条例は、多少の差はあれ多くの都道府県にあるようだ。秋山弁護士は続ける。
「刑罰の対象となる法規は、犯罪が成り立つ要件が厳密に規定されており、要件に該当しない行為は罰せられることがありません。
したがって、たとえば、転売目的ではなく、自分で見に行くつもりで日本シリーズのチケットを購入したが、前日風邪を引いてしまい見にいけないので友人に売った、という場合には(1)にも(2)にも該当しないので、罰せられません」
つまり、転売が「ダフ屋」として処罰されるのは、都内では(1)か(2)に当てはまる場合だけ、ということだ。
ただ、最近ではインターネットでの転売が「ダフ屋」として摘発されたこともあるようだが……?
「都条例の規制が適用されるかどうかのポイントは、転売目的かどうかや、『公共の場所』における行為かどうかによります。
ただ、『公共の場所』については、多少拡張解釈されてきているようです。たとえば、ネットでの転売目的でコンビニエンスストアでチケットを購入した場合、コンビニが『公共の場所』に該当するとして検挙された事例があるようです。
チケットを転売した場所のネットが『公共の場所』とはいえないため、捜査機関が半ば強引に、チケットを買った場所のコンビニを『公共の場所』として捉えたのだろうと思われます」
なるほど、このケースでは、販売した場面ではなく、購入した場面が条例違反とされたようだ。
ところで、そもそもチケットに「転売禁止」などと書いてある場合もあるようだが、それは条例とは関係ないのだろうか?
「チケットが『転売禁止』という条件で販売されている場合、転売で購入したチケットを提示しても、入場拒否されることはあります。ただし、それは刑事ではなく、民事の問題です」
つまり、その場面で問題となるのは条例違反ではなく、イベント主催者とチケット購入者との間の契約違反、ということなのだろう。自分で行くはずが行けなくなり、チケットをどうしようかと悩んだら、まずこうした注意書きをよく読んだほうが良さそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
2001年に弁護士登録。所属事務所は現在弁護士6名で、交通事故等の各種損害賠償請求、契約紛争、離婚・相続、債務整理、不動産関連、企業法務、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。
事務所名:山崎・秋山法律事務所
事務所URL:http://www.yamaaki-law-office.com/