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「戦時中の賠償」を認めた「韓国の裁判所」 どこが問題なのか?

2013年10月16日 16:51  弁護士ドットコム

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戦時中の強制労働をめぐって、日本企業に賠償を命じる判決が、韓国の裁判所で相次いでいる。7月10日には、ソウル高裁が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に対して、第二次世界大戦中に徴用した韓国人4人へ計4億ウォン(約3500万円)の賠償を命じる判決を出した。


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また7月30日には、韓国人の元徴用工5人が三菱重工業を訴えた裁判で、釜山高裁が1人あたり8000万ウォン(約700万円)の賠償を命じる判決を下している。このほかにも、同様の裁判が4件争われているということで、さらに同じような判決が続く可能性がある。



戦時中の韓国人徴用工の問題については、1965年の「日韓請求権協定」で解決済み、というのが日本政府の立場だ。菅義偉官房長官も9月に「日韓請求権協定がすべてだ。ここで支払うようなことがあったら、すべてが崩れてしまう」と発言している。



新日鉄住金と三菱重工業は今後、韓国の最高裁で争うことになると見られるが、この裁判にはどのような問題があるのだろうか。国会議員でもある丸山和也弁護士に聞いた。



●「司法が政治の道具になってしまっている」


「外国での判決の効力については、民事訴訟法が関連します」



このように述べながら、丸山弁護士は次のように説明する。



「民事訴訟法118条は、次の4要件がそろう場合には、外国の判決の効力が認められると定めています。



(1)法令や条約により、外国裁判所の裁判権が認められること



(2)敗訴の被告が、訴訟の開始に必要な呼出しや命令の送達(公示送達やそれに類する送達は除く)を受けたこと、または、これを受けなかったが応訴したこと



(3)判決の内容と訴訟手続が、日本における公の秩序や善良の風俗に反しないこと



(4)相互の保証があること



最後の「相互の保証」とは、外国人の権利に関して、その外国人の本国が、自国民に同等の権利を与えることを保証することを言います。つまり、A国の国民からB国の国民に対する請求が認められるには、B国の国民からA国の国民に対する請求が認められることが前提となります」



このように外国の判決の効力が認められる要件を説明したうえで、「本件に関しては、上記4要件はすべて認められるとされました」と丸山弁護士は述べる。



では、今回の判決が確定した場合、日本企業は賠償の支払いに応じなければならないのだろうか。ここで問題となるのが、日本と韓国の間の特殊事情である「日韓請求権協定」だ。



「新日鉄住金としては、日本と韓国の間で、戦時中の請求権がすべて消滅したものとする『日韓請求権協定』が締結されていることから、そもそも請求権が消滅しているとして請求が認められないと主張しました。



しかし、韓国の高等裁判所は、強制労働を理由とする損害賠償請求権については日韓請求権協定の対象外であると判断したのです。これは日韓請求権協定という国際上の約束を国内法で覆すものであり、まさに言語道断の判決です」



このように丸山弁護士は批判し、「韓国では司法が政治の道具になってしまっており、韓国は法治国家としての体をなしていないとすら言えるでしょう」と憤っている。今後、韓国の最高裁がどのような判断を下すのか、注目されるところだ。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
丸山 和也(まるやま・かずや)弁護士
1946年、兵庫県生まれ。73年に弁護士登録(東京弁護士会)。78年にワシントン大学ロースクール卒業。弁護士活動のかたわら、テレビなどで幅広く活躍。「行列のできる法律相談所」で人気を博した他、「24時間テレビ」で100kmマラソンを完走した。2007年から現在まで参議院議員(全国比例)を務めている。
事務所名:弁護士法人丸山総合法律事務所