2013年10月12日 16:41 弁護士ドットコム
毎日、自宅のポストに断わりもなく突っ込まれている広告チラシ。仕事が終わって帰ってきて、それを見た瞬間、1日の疲れがドッとでる。
【関連記事:ファミレスの客待ち名簿に「古畑任三郎」や「江戸川コナン」と書いたら犯罪か?】
すぐにゴミ箱直行としたいところだが、郵便物が紛れていることがあるため、まとめて捨てるわけにはいかない。1つ1つ確認しながら、「アパート暮らしのオレに数千万円のマンションなんて買えるか!」という怒りがこみ上げてくる。
「チラシお断り」のプレートをポストに貼ったところで、あまり効果は出ない。では、このような郵便配達物以外のチラシを、法的に拒絶する方法はないのだろうか。また、「チラシお断り」の但し書きを無視するポスティング業者や依頼主を訴えることはできないのだろうか。日本マンション学会の会員でもある魚谷隆英弁護士に聞いた。
「明確に拒絶しているのにチラシを入れるというのは悪質ですが、法律で効果的にチラシのポスティングを止めさせることは難しく、チラシの内容が一般的なものであれば、現実問題として、業者や依頼主を訴えることは難しいと思います」
魚谷弁護士はこう指摘する。しかし、チラシの投入が無条件で認められているわけではなさそうだ。
「ポスティングを行う場合、マンションのポストに入れるなど、建物や敷地内に入ってポスティングするときは、その場所を管理している管理組合などの意思に反することはできません。
仮に管理権者の意思に反して行えば、建造物侵入罪(刑法130条)や軽犯罪法違反となる可能性があり、現に、政治的なビラのポスティングについて、建造物侵入罪の成立を認めた最高裁判所の判例もあります」
政治ビラのポスティングを取り締まることは、表現の自由との兼ね合いで大きく問題視されているが……。そういった例すらあるのであれば、「不快な広告チラシ」を入れるポスティング業者や依頼主の責任を問うことも可能に思える。だが、それは現実的ではないようだ。
「チラシをポスティングされただけでは、投函された人が具体的な損害を受けたとは言いにくいです。もし、仮に業者に対して損害賠償請求ができたとしても、金額はわずかなものに留まるでしょう。
依頼主を訴えることも、現実的には難しいと思います。依頼主がわざわざ業者に『違法なやり方でポスティングしてくれ』と頼みはしないでしょう。またもし、違法なポスティングを知っていたなどの事情があったとしても、証明は困難です」
確かに、チラシは必ずきちんと読まなければならないものではない。郵便物を確認する際、一瞬、不快な内容が目に入る程度なら、我慢すべき範囲なのかもしれない。魚谷弁護士は「業者や依頼主には、迷惑なチラシが人に不快感を与え、逆効果になってしまう場合があることを理解してもらいたいところです」と付け加えていた。
なお、今回の話は一般の営業チラシを想定したもので、風営法や条例等で規制されている、いわゆる「ピンクチラシ」など、話が別のケースもあるということだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
魚谷 隆英(うおや・たかひで)弁護士
2001年弁護士登録。2011年に独立し、うおや総合法律事務所開設。企業関係の裁判、保険法務、倒産事件等を主に扱う。日本マンション学会会員で、暮らしに密接した分野の相談にも積極的に取り組んでいる。
事務所名:うおや総合法律事務所
事務所URL:http://uoya-law.com