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「指紋認証」搭載の新型iPhone 「偽造指紋」でロック解除したら犯罪になる?

2013年10月11日 12:41  弁護士ドットコム

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アップル社が9月20日に全世界で発売した新型iPhone。発表直後には意外性がない、などとくさす声も上がったが、どっこい、売れに売れているようだ。発売後3日間の販売台数は、過去最高の900万台を超えているという。


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上位機種のiPhone 5sに追加された目玉機能の一つが、指紋認証機能「Touch ID」だ。これで、ロック状態を解除する際などの、面倒なパスワード入力が省略できる。セキュリティもばっちり安心……と思っていたら、ロイター通信から驚きのニュースが飛び込んできた。



なんと、ドイツの「ハッカー集団」が、早くもこの新セキュリティを破り、偽造した指紋で認証を突破したというのだ。ただし、報道によると、認証を突破するためにはあらかじめ、対象者の指紋を撮影し、透明なシートに印刷する必要があるようだが。



もしこのような方法で他人のiPhoneのロックを解除した場合、何かの法律に触れることになるのだろうか。盗んだIDやパスワードで、ネットワーク上のパソコンなどに不正アクセスした場合はいわゆる「不正アクセス禁止法違反」になるはずだが……。iPhone 5sをさっそく仕事に活用しているという澤藤亮介弁護士に聞いた。



●偽造指紋による本体のロック解除は「不正アクセス」にはならない


「まず、偽造された指紋を使用してiPhone本体のロックを解除すること自体は、『不正アクセス禁止法』の『不正アクセス行為』には該当しません。



この法律で禁止されているのは、ネットワークを介した不正アクセスです。指紋認証によるiPhone本体のロック解除は、ネットワークを介さない機能なので、この法律の対象とならないのです」



このように澤藤弁護士は説明しながら、次のように続ける。



「しかし、ロック解除後に、iPhone本体に記憶されているIDとパスワードを使用して、インターネット上のサービスを利用すれば話は別です。



Yahoo!メールやGmailなどを立ち上げて、iPhone使用者本人のメールを閲覧したり、楽天、Amazonなどで買物をすれば、同法の『不正アクセス行為』に該当し、処罰の対象となります。法定刑は3年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。



また同様に、偽造の指紋を使用して、Touch IDでApp Storeからアプリを購入する行為もこれに含まれるでしょう。こうした行為はほかに、刑法の『電子計算機使用詐欺罪』に該当する可能性も出てきます」



●他人のiPhoneの情報を盗み見れば「プライバシー侵害」の可能性


澤藤弁護士はまた、民事上の責任についても注意を促す。



「勝手にロックを解除して、iPhone本体に記録されている情報を盗み見した場合、ネットワークを介したかどうかに関わらず『プライバシー権の侵害』になる可能性があります。さらに盗み見た情報を第三者に公開までしてしまうと、民法上の『不法行為』として、持ち主から損害賠償を請求される可能性も考えられます」



他人の持ち物をのぞき見てはいけない、というのは常識だが、スマートフォンだとなおさら、「ついつい見てしまった」では済まないようなプライベート情報が入っている可能性もあるだろう。



澤藤弁護士は「近年、不正アクセス行為での検挙数も増加しているとともに、2012年の法改正では量刑も以前より重くなっています」と指摘。「どのような行為が処罰の対象となるのか、知っておく必要性は益々高まっていると言えるでしょう」とアドバイスしていた。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。離婚、男女問題、労働問題などを中心に取り扱う。自身がiPhoneなどのデバイスが好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。
事務所名:新宿キーウェスト法律事務所
事務所URL:http://www.keywest-law.com