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グリーが200人の「希望退職者」を募集 いわゆる「整理解雇」とはどう違うの?

2013年10月10日 20:21  弁護士ドットコム

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ソーシャルゲーム大手のグリーが10月初旬、希望退職者を200人ほど募集すると発表し、ネット業界に衝撃が走っている。


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この数年、飛ぶ鳥を落とす勢いのグリーだったが、他社との競争激化などで、今年6月期の決算で上場後初めての減収減益を記録した。国内正社員の「リストラ」に踏み切るのは初めてという。



発表によると、「事業規模の適正化と経営資源の効率化」のため、10月9日から28日までの間に希望退職者を募集する。また、退職予定日は11月30日とされている。同社には、6月30日時点で従業員(単体)が1762人おり、200人はおよそ11%にあたる規模だ。



東洋経済オンラインによると、今回の募集に応じて退職するグリー従業員には、特別転職支援金が支給されるという。経営悪化した企業が「整理解雇」を断行したというニュースはたまに目にするが、今回の「希望退職者募集」とはどのように違うのだろうか。労働問題にくわしい河野祥多弁護士に聞いた。



●従業員の意思によるかどうかがポイント


「経営的に苦しくなったとき、会社は、経営の合理化(人件費の削減)のために従業員を減らすことがあります。



そのために会社としては、まずは、退職金の上積みや再就職先の斡旋等の特典をつけた形で、従業員に自発的な退職を促します。これが『希望退職の募集』です。つまり、退職するかどうかは従業員の意思次第ということになります」



今回グリーが発表したのはこちら。つまり早期退職に伴う特典などのメリットと職を失うデメリットを総合的に判断し、最終的には「従業員自身が辞めるかどうかを決める」という内容だ。



「これに対して、『整理解雇』とは、会社の都合で従業員を強制的に解雇することです。



整理解雇は、強制的に会社を辞めさせるという方法であるため、それが有効とされるためには、以下の4つの厳しい要件をクリアしなければなりません。



(1)人員削減の必要性があること



(2)会社が解雇を回避するための努力を果たしていること



(3)解雇対象者の人選は適正に行われていること



(4)従業員に対する説明等の手続きがきちんとなされていること」



これらの要件を4つともきちんと満たしていないと、整理解雇は「無効」になるという。河野弁護士は続ける。



「希望退職の募集は、(2)の解雇回避のための努力の判断材料の一つとして考慮・検討されます。



そこで企業は一般的に、まずは希望退職の募集を行い(従業員の意思による退職)、それでも十分でない場合にはじめて整理解雇(会社の意思による解雇)を行うことになります」



そうなると、今後の注目ポイントは「希望退職者募集」に、実際にどれぐらいの応募があるのかだろう。業界全体にも影響を与える大手だけに、その一挙一動から目が離せない展開となっている。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
河野 祥多(こうの・しょうた)弁護士
2007年に茅場町にて事務所を設立以来、個人の方の相談を受けると同時に、従業員100人以下の中小企業法務に力を入れている。最近は、ビザに関する相談も多い。土日相談、深夜相談も可能で、敷居の低い法律事務所をめざしている。
事務所名:むくの木法律事務所
事務所URL:http://www.mukunoki.info/