2013年10月04日 15:01 弁護士ドットコム
ツイッターに投稿された不謹慎な写真がきっかけで「炎上」するケースがあいついでいるが、今度は「土下座写真」が物議をかもしている。衣料品チェーン「ファッションセンターしまむら」の従業員に土下座をさせ、その写真をツイッターに投稿したユーザーが炎上する騒ぎが、9月下旬に起きたのだ。
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このユーザーが9月上旬にツイッターに投稿した内容によると、「従業員の商品管理の悪さの為に客に損害を与えた」として、北海道内のしまむら店舗の従業員を土下座させたのだという。投稿された写真には、床の上で手を揃えて土下座する女性店員2人が写っており、「土下座させるお客様凄い凄過ぎる怖い怖過ぎる」という言葉も付いている。
この写真はネットで話題になり、「不愉快極まりない」「悪質クレーマー」などと非難が殺到した。9月に終了した人気ドラマ『半沢直樹』では、主人公の半沢が悪徳上司への「倍返し」として、土下座をさせるシーンが出てきたが、それになぞらえて「半沢の観過ぎ」と揶揄する声もあった。
ドラマなどではよく聞く「土下座してお詫びしろ!」というフレーズだが、もし実際に土下座を強要したら、何らかの罪に問われるのだろうか。好川久治弁護士に聞いた。
●店員に土下座をする義務はない
「もし、『土下座をしてお詫びをしろ!』と要求した客が、『そうしなければ、店の悪い評判をネットで流す』、『街宣車を店舗に向かわせる』、『上司や会社に通報する』などと店員を脅迫していた場合には、『強要罪』(刑法223条1項、3年以下の懲役)が成立する可能性があります」
好川弁護士はこう指摘する。店側に謝罪すべき点があったとしても、同じなのだろうか。
「たとえトラブルの原因が店員の対応ミスで、社会通念上は、店側が客に謝罪をすることが適当な場合でも、店員には『土下座』をする義務まではありません。
したがって、客が脅迫して店員に土下座をさせれば、強要罪が成立する可能性があるのです。なお、結果的に店員が土下座をしなかった場合でも、強要未遂罪に問われる可能性があります」
●ツイッターへの「土下座写真」投稿も業務妨害や名誉毀損になる可能性が……
「また、店員が、こうした客の行き過ぎたクレームへの対応を余儀なくされ、あるいは『土下座をした店員の写真をツイッターに投稿した行為』により、店舗の業務に支障が生じたとすれば、威力による業務妨害罪(刑法234条、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)も成立する可能性があります」
好川弁護士は続ける。
「さらに言うと、こうした投稿は、店舗の社会的評価を低下させるおそれのある行為ですから、名誉棄損罪(230条1項、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金)が成立する可能性もあります」
こうなってくると「凄い・怖い」で済まされる話ではなさそうだ。ドラマなどで、人の心情を描くための演出としてはアリだとしても、現実に土下座を強要するのは厳禁……ということだろう。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
好川 久治(よしかわ・ひさじ)弁護士
1969年、奈良県生まれ。2000年に弁護士登録(東京弁護士会)。大手保険会社勤務を経て弁護士に。東京を拠点に活動。家事事件から倒産事件、交通事故、労働問題、企業法務まで幅広く業務をこなす。趣味はモータースポーツ。
事務所名:ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
事務所URL:http://www.hnns-law.jp/