2013年09月27日 19:31 弁護士ドットコム
保釈金を準備できない刑事被告人への支援制度が今年7月から、東京など一部地域で始まった。全国弁護士協同組合連合会(全弁協)が一定の審査をしたうえで、身元引受人から事務手数料として保証金の全額の2%を受け取り、被告人自身の自己負担金として保証金の全額の10%を預かり、「保証書」を出すというものだ。
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●経済的な理由で、保釈金を用意できない被告人もいる
刑事事件で逮捕・勾留された者は、起訴されたあと、逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合などに、裁判所の許可を受けて、身体の拘束を解かれる(保釈される)。その際、被告人は裁判所に保釈保証金、つまり保釈金を納める必要がある。
保釈金の額は、被告の経済状況や問われている罪の重さなどによって、裁判所が決定する。その相場は100~300万円と言われ、経済的に余裕のない被告人は保釈金を用意できないケースも多いという。
「保釈金が高くて払えないという理由だけで、経済的弱者の人たちの保釈が認められないのはおかしいと考えてきました」
このように語るのは、保釈支援にたずさわっている水野英樹弁護士だ。
刑事訴訟法には、「裁判所は、保証書をもって保証金に代えることを許すことができる」という趣旨の規定があり、水野弁護士は「今回の取り組みは、今まで民間に任せっきりにしてきた保釈支援を、弁護士会も後押ししようということで始まった」と説明する。
「全弁協は、被告人が逃亡した場合に、保証金を回収できる見込みがあるかという審査しかしません。全弁協は、この人は保釈していいとか、駄目だとかを判断しているわけではないのです。そういった判断は裁判官がする仕事です」
●「全国津々浦々で、この制度を利用できるようにしたい」
今回の運用が始まった7月から9月中旬までに、全弁協には72件の申し込みがあったという。そのうち実際に保証書の代納が認められたケースは26件しかない。全弁協の審査を通らなかった11件を差し引くと、半数近くの35件は、何らかの理由で保釈が認められなかったか、あるいは保証書による代納が認められなかったケースだ。
審査にあたって、全弁協は被告人本人とは一切接触しないことにしている。「全弁協が接触するのは、その被告人の弁護人だけです。また審査基準について、利用者にも弁護士にも公表しない」という。
一方で、この支援制度は今のところ、東京など24地域での運用にとどまっており、全国一律に使われているというわけではない。そのため、「まずは全国津々浦々で、この制度を利用できるようにしたい」と水野弁護士は意気込む。
「制度が普及すれば、現在一割と定めている自己負担金をさらに軽減したり、手数料を安くしたいとも考えています。たとえ一割の負担金でも支払うのが大変だという人はいるので、民間の事業者とも補完しあいながら、一人でも多くの人が保釈されるようになればと思います」
(弁護士ドットコム トピックス)