2013年09月25日 11:41 弁護士ドットコム
駅前などの路上で、ホームレスの人が販売している『ビッグイシュー』という雑誌を見かけたことがあるだろうか。『ビッグイシュー』は、ホームレスの自立支援などを目的とした雑誌。定価300円のうち160円が実際に販売したホームレスの収入となる仕組みだ。
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もともとはイギリス発祥で、日本版は今年9月に創刊10周年を迎えた。毎号、著名な作家や大物ミュージシャンのインタビューが掲載されるなど、内容が充実しており、購入してみて驚いたという声もある。
さて、この『ビッグイシュー』、少々意地悪な見方をするようだが、路上で販売するにあたって、役所の届出や許可という手続きをとっているのだろうか。たとえば、東京都の路上で弁当を販売する場合には、条例に基づいて、保健所への届出などが必要になってくる。ビッグイシューの活動にたずさわっている木原万樹子弁護士に聞いた。
●「移動販売」形式であれば、道路法の「占有許可」は必要ない
「ビッグイシューの表紙をめくってみてください」
木原弁護士は、こう語りかけた。
「表紙の裏、左下に記載されている『販売者の行動規範5項』にあるように、ビッグイシューは、『移動販売』の形式をとっていますので、道路法上の占用許可(同法32条参照)等は必要ありません。
ただ、道路上の目に付くところで販売するのは確かですので、販売を開始する際は、自治体ごとに、その自治体を管轄する警察本部と、協議を行う販売方針をとっています。各地の警察に対し、十分な理解を求めたうえで、販売を行っているのです」
●生きがいを感じながら、ビッグイシューの販売を続けている
このようにビッグイシューの路上販売の仕組みを説明したうえで、その目的について、木原弁護士は次のように説明する。
「ご存じの方も多いかと思いますが、ビッグイシューは、ホームレスの人々に収入を得る機会を提供しています。販売者は、『雑誌販売』という人と接しつつ情報を発信していく仕事に生きがいを感じながら、販売を続けているのです。
ビッグイシューの販売者それぞれが、さきほどの行動規範を遵守して、人の流れの邪魔にならないよう移動しつつ、販売努力を続け、自身のホームレス状況を解消していこうとしています」
ホームレスの人々の数は減少傾向にあるとはいえ、厚労省の発表によれば、路上・河川・駅舎等での生活を余儀なくされている人の数は、2013年1月時点で8265人に上るとされる。そのようなことから、木原弁護士は次のように呼びかけている。
「ホームレスの人々が、安定した生活を取り戻すためにも、ビッグイシューを販売しているのを見つけたら、販売者に声をかけて、購入してみてもらいたいと思います」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
木原 万樹子(きはら・まきこ)弁護士
大阪弁護士会常議委員会委員、人権擁護委員会ホームレス問題・社会保障部会委員、ホームレス法的支援者交流会共同代表
事務所名:木原法律事務所