2013年09月20日 12:41 弁護士ドットコム
銃砲刀剣類所持等取締法、いわゆる「銃刀法」は、一般の人にとってあまり縁のない法律と思えるかもしれない。だが、なんらかの刃物を持ち歩く機会は、誰にでもあるのではないだろうか。たとえば、キャンプなど屋外で調理しようというときに包丁は欠かせないし、文房具としてハサミやカッターをカバンにいれている人もいるだろう。
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誰かに危害を及ぼすつもりはなく、特に気にも留めずに持ち歩いている人がほとんどだろうが、ハサミやカッターも、刃物の一種であることに変わりはない。そうだとすると、ハサミをカバンに入れているだけで、「銃刀法」に抵触してしまうこともあるのだろうか。もし違法だとしたら、法に触れない刃物の持ち運び方はあるのだろうか。京都弁護士会刑事委員会の委員長をつとめる辻孝司弁護士に聞いた。
●刃体の長さ6センチ以下の刃物は、銃刀法の規制対象ではない
「ハサミやカッターナイフ、包丁を持ち歩いていたからといって、いちいち銃刀法違反で捕まってしまったら大変ですね。確かに、銃刀法は『刃物』を携帯することを禁止しています。違反すると、2年以下の懲役または30万円以下の罰金になります。しかし、『刃物』なら何でも規制されているわけではありませんし、『正当な理由』があれば、携帯することも許されています」
――携帯が禁止される「刃物」とは?
「銃刀法は刃体の長さが6センチを超える刃物の携帯を禁止しています。刃体の長さ6センチ以下の刃物は銃刀法の規制対象ではありません。ただし、軽犯罪法の規制対象とはなります。また、刃体の長さが6センチを超えていても、8センチ以下のハサミなど禁止対象外の刃物もあります。
もっとも、普通の包丁やカッターナイフは、刃体の長さが6センチよりも長いでしょうから、携帯が禁止される『刃物』に該当します。したがって『正当な理由』がない限り、包丁やカッターナイフを『携帯』することは許されません」
――「正当な理由」がある場合とは?
「正当かどうかは、普通の人の常識を基準として判断されます。釣りやキャンプで使う、店で購入して家に帰る途中、仕事や授業で使うといった際に携帯して持ち運ぶことは正当な理由があるということになります。しかし、『殺すため』『脅すため』というのはもちろんダメですし、『護身用』『なんとなくファッションで』というのも、正当な理由とはいえません」
――持ち運び方に注意は必要?
「銃刀法によれば、『刃物』を運搬している人に異常な挙動があるなど、他人の生命や身体に危害を及ぼす恐れがあるとみられる場合、警察官は、刃物の入っているカバンを開けさせて調べたり、刃物を提出させたり、一時保管したりすることができます。
したがって、刃物をむき出しで持っていたり、腰からぶら下げていたりしたら、警察官に疑われて止められてしまうでしょう。刃物はケースに入れたり、梱包したりしたうえで、カバンに入れて運んだほうがいいでしょう」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
辻 孝司(つじ・たかし)弁護士
京都弁護士会:刑事委員会委員長、元副会長、日本弁護士連合会:刑事弁護センター、死刑廃止検討委員会、近畿弁護士会連合会:刑事弁護委員会副委員長、京都産業大学法科大学院非常勤講師、学校法人ノートルダム女学院監事、NPO法人国際プレゼンテーション協会理事
事務所名:京都はるか法律事務所
事務所URL:http://www.kyoharu.com/