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「遺骨」はいったい誰のもの? 故・藤圭子さんの遺骨の行方を決めるのは?

2013年09月17日 19:11  弁護士ドットコム

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宇多田ヒカルさんの母で、先月亡くなった歌手の故・藤圭子さんの「遺骨」をめぐって、トラブルが起きているようだ。


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雑誌などの報道によると、藤さんの遺骨は当初、実家の「阿部家」の墓に入ると見られていたが、前夫の音楽プロデューサー・宇多田照實さんが新しくもうける「宇多田家」の墓に納骨される方向で、話が進んでいるのだという。こうした状況に、藤さんの実兄が反発しているというのだ。



このような遺骨をめぐるトラブルは芸能人だけでなく、一般の家族でもしばしば起きている。そもそも遺骨は、本人の死後、誰のものになるのだろうか。村上英樹弁護士に聞いた。



●「遺骨」の行方は、現金や不動産などの「遺産」と区別して考える



「遺骨にも『所有権』があるというのが、古くからの判例の考え方です」



このように村上弁護士は説明する。では、遺骨の所有権はどのように決まるのか。



「遺骨が誰のものなのか、という点については、学者によっていろいろな説があるのですが、1989年(平成元年)の最高裁判決では『慣習に従って祭祀を主宰する者』のものである、とされています。いわゆる遺産(現金、預金、不動産など)のような、通常の相続の対象になるものとは、異なる扱いがされているのです」



では、「祭祀を主宰する者」というのは、どういう人を指すのだろうか。



「これは、『故人の霊をまつる中心の人』という意味ですが、それが誰になるかは、次のように決まります。



民法によれば、第1に『亡くなった人自身の指定』、第2に『慣習』、第3に『家庭裁判所の指定』によって定まるとされています」



つまり、遺言で「葬儀や法事は●●にまかせる」などと指定してあれば、その人物が「祭祀を主宰する者」となり、遺骨もその人のものになるというわけだ。



●「祭祀を主宰する者」は通常、親族間の話し合いで決まる



だが、「生前に故人が、自分が死んだ後のことを考えて、自分の霊をまつってほしい人を指定しているケースは、実際上少ないでしょう」と村上弁護士は指摘する。



「普通は、親族などの話し合いによって、配偶者や子どもなどのうち誰かが『祭祀を主宰する』ことになります。しかし、親族間に確執がある場合は、すんなり決まらないことがあります」



そうなると、どうなるのか。



「もめにもめた場合には、家庭裁判所が決めることになります。その場合は、事情を総合判断して、故人と緊密な生活関係にあって、故人に対して愛情や感謝の気持ちが強いと思われる人を指定することになります」



藤さんの遺骨の行方はまだはっきりしていないと伝えられているが、最終的には、家庭裁判所が判断することになる可能性もあるということだろう。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
村上 英樹(むらかみ・ひでき)弁護士
主に民事事件、倒産事件(債務整理含む)を取り扱い、最近では、交通事故(被害者)、先物取引被害、医療過誤事件も多い。法律問題そのものだけでなく、世の中で起こることそのほかの思いをブログで発信している。
事務所名:神戸シーサイド法律事務所