2013年09月15日 14:21 弁護士ドットコム
ニュースでおなじみの「国際法」という言葉。最近では、中東・シリアでの紛争をめぐって、米国が「シリアで化学兵器が使われたのは『国際法』違反だ」と主張したり、ロシアが「国連安保理の承認なしに軍事介入することは『国際法』に違反する」と反発するなど、登場するケースが増えているようだ。
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だが「国際法って何?」と聞かれて、即答できる人は少ないだろう。国際法とはいったいどんな法律なのだろうか。また、違反すると「処罰」されることもあるのだろうか。堀晴美弁護士に聞いた。
●国際法に違反すると「制裁」や「刑事罰」を科される
「国際法は『国際社会を規律する法』ですが、憲法や民法、刑法のように、どこかにまとめて文書化されているものではありません。『国際法』という名前の単一の法律があるわけではないのです。
国際法は、様々な形のルール(法源)から成り立っています。法源となるのは(1)条約、(2)慣習法、(3)法の一般原則、(4)判例、(5)学説などです。国際社会を規律する様々なルールを総称して『国際法』と呼んでいるのです」
――国際法違反の判断や、処罰はどういった形で行われるの?
「もっともイメージしやすい典型例は、『国連決議』や『国連安保理決議』が出され、決議に基づく経済制裁が、違反国に対して行われるケースでしょう。この場合の『国連決議』や『国連安保理決議』が、国際法にあたります。
シリアの紛争で問題になっている化学兵器については、1925年のジュネーブ議定書で使用が禁止されているほか、1997年の化学兵器禁止条約で開発・生産・保有を包括的に禁じています。これも国際法といえますが、シリアはジュネーブ議定書の締約国なので、『化学兵器を使用すると国際法違反』ということができます。
また、国際司法裁判所(ICJ)や、国際刑事裁判所(ICC)で裁判が行われ、その結果、『A国はB国に対して賠償金を支払え』といった、判決が下される場合もあります」
●「個人」に刑事罰が科されるケースもある
――国際法の対象となるのは、国家だけ?
「以前はそう考えられていました。しかし、今では範囲が広がり、国家や国際機関だけではなく、個人や多国籍企業にも効力が及ぶようになっています。たとえば、国連安保理が特別に(ad hocに)設置した刑事裁判所が、個人に対して刑事罰を課した例もあります。
具体的には、旧ユーゴスラビアやルワンダでの民族虐殺などに対して設置された特別法廷で、『ジュネーブ条約違反』や『ジェノサイド罪』などを理由に、戦犯個人が刑事罰を課されています」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
堀 晴美(ほり・はるみ)弁護士
企業の海外進出のサポートを主としているが、離婚、男女関係の問題も取り扱っている。「United Nations Register of Damage caused by the Construction of the Wall in the Occupied Palestinian Territory」の非常勤理事も兼務。国際政治経済が主な関心事で、毎日ジムに通うのが日課。
事務所名:堀国際企業法務法律事務所
事務所URL:http://kokusaibengo.com