2013年09月13日 14:21 弁護士ドットコム
「遺産を受け取ってほしい」「相談にのってくれたらお金を払う」。突然、魅力的な異性や芸能人、資産家などから、こんな「誘い」のメールが届く。相手とやり取りを続けていると、いつの間にかサイトに誘い込まれ、登録料や有料サービスの利用料など、多額のお金を支払うことになる・・・
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こういった手口は「サクラサイト商法」と呼ばれている。
「こんな手に引っかかるはずはない」と思う人も多いだろうが、国民生活センターへの被害相談は後を絶たないようだ。被害者たちは、なぜだまされるのだろうか。サクラサイト商法の実態にくわしいに石渡幸子弁護士聞いた。
●被害者の疑念を払拭する「巧みな言い訳」が用意されている
「サクラサイト商法は、未だに多くの被害を出しています。芸能人のマネージャーや関係者を名乗るメールで被害に遭うケースも、一時期よりは下火とはいえ、いまだにあります」
芸能人や関係者が突然連絡してくるはずがないのは、普通に考えればわかるはずだと思うが・・・。
「被害者も当然、最初はそういった疑念を持っています。ところが、その疑いを払拭する巧みな言い訳やストーリーが、業者によってちゃんと用意されているのです。そして、ひとたびやりとりを始めてしまうと、被害者は同情心や義侠心に付け込まれ、自発的にはやめられない心理状態に追い込まれてしまいます」
被害者はそうしてサクラサイトに引きずり込まれ、長期間、有料メールの送受信をさせられて多額の利用料金を業者に支払ったり、アドレス交換のためなどとして、多額の費用を業者に支払うはめになるという。
他にはどんなケースがあるのだろう。
「会社経営者や医師、弁護士等を詐称するサクラメールも多いですね。謝礼金や人助けなど、口実はさまざまですが、最終的に高額の費用を支払わされるのは同じです」
●被害者がメール交換する相手は、サイト業者が雇用した「アルバイト」
やり取りを続けさせられる……と言われても実感がわかない部分もある。なぜ、そんな事態に陥ってしまうのだろうか。何かおかしいと気づいた時点で、すぐにやり取りを中止するわけにはいかないのだろうか。
「そこは相手も巧妙で、被害者がメール交換を辞められないような設定が事前に作り上げられているのです。たとえば、メール交換を続けなければ、別の『第三者』に迷惑がかかるといった設定です」
こうした第三者は「メールを止めないでと懇願してくる人」の場合もあれば、「続けろと脅迫してくる人」の場合もあり、複数人が登場するケースもある。こうした登場人物はすべてが業者側のサクラだという。
「つまり、『サクラ』は何人もいるのです。この悪徳商法で、被害者がメール交換する相手は、サイト業者が雇用したアルバイトです。彼らはあらかじめ作成されたキャラクター設定やストーリーに従って、アイドル、人気芸能人や実在の職業・団体を名乗ってメールを送ってきます。
こうした『ストーリー』は、冷静に考えると不合理な内容です。しかし、業者によって巧みに作り上げられ、アルバイトが扱えるように『キャラクター設定』がマニュアル化もされているため、騙されるケースが後を絶たないのです」
サクラサイトに誘導されるきっかけはメールだけでなく、占い、懸賞サイト、アルバイト情報、婚活サイトなど、多種多様のようだ。最近の傾向としては、SNSやLINEなどでのやり取りを通じて、サイトに誘導されるケースも増えてきたという。
「詐欺の手口・手法は、常に『進化』しています。くれぐれも気をつけてください」
石渡弁護士はこう注意を呼びかけていた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
石渡 幸子(いしわたり・ゆきこ)弁護士
東京3会の消費者系弁護士の任意団体である、クレジット・リース被害対策弁護団所属。弁護団の属するサクラサイト詐欺全国連絡協議会は、サクラサイト商法の被害撲滅を目指している。