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「最大のハードルはギャンブルへの偏見」 弁護士が読み解く「カジノ合法化」への課題

2013年09月13日 12:21  弁護士ドットコム

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いよいよ日本にもカジノができる!?――参院選で自民党が圧勝したことを受け、早ければ年内にも、カジノ解禁へ向けた法案が国会に提出されるという観測が広がっている。


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カジノは経済効果が大きいとされる。レジャー施設やホテルなどを集めた複合リゾート施設が実現すれば、国内外から観光客を呼び込むことができるからだ。安倍晋三首相もカジノ導入に前向きだという。



しかし、「カジノ合法化」はこれまで何度も検討されては消えてきたテーマでもある。治安の悪化や青少年への悪影響、マネーロンダリングの問題などへの懸念も根強いからだ。そういった課題を「今度こそ」クリアできるのだろうか。カジノ賛成派の津田岳宏弁護士に聞いた。



●厳格な年齢確認やマネーロンダリング対策は必須



「まず青少年対策については、現行の風営法よりも厳しいルールが必要でしょう。



風営法では、パチンコ店などに未成年が入店していたのが発覚した場合、たとえ店に過失があったとしても、それだけでは処罰されません。



店側には『未成年には見えなかった』という言い訳が許されているのです。カジノの場合、これだと緩すぎます」



――風営法だと、パチンコ店など店側が処罰されるのは、未成年だということを知っているのに、入店を許したというような場合などに限られているということか。



「そうですね。カジノを実現するとなれば、それでは不十分です。入店時に身分証を提示させるなど、もっときちんとした年齢確認を義務付けて、言い訳を許さない厳格な規制をすべきです」



――「マネーロンダリング対策」も必要?



「もちろん必要ですね。たとえば、カジノでの現金取引について一定額以上の両替を禁止する、現金出し入れを記録し、当局への報告義務を課す……などの規制をすべきでしょう」



●日本は、ギャンブルへの風当たりが極めて強い国



――そういった規制をかければ済むのなら、すぐにでも実現可能に思えるが……?



「いや、そう簡単にはいきません。カジノの合法化に向けた最大のハードルは、ゲーミング(ギャンブル)への偏見です。とくに日本は、ギャンブルへの風当たりが極めて強い国と言えます。



かつてサッカーくじが導入されたときも、激しい反対運動が起きましたし、カジノについても同じことが予想されます。



こういった偏見の背景には、過去に明治政府が自由民権運動への弾圧と関連して、賭博(博徒)を厳罰に処する法律をつくったことなどもあります」



――「近隣地域の雰囲気が悪くなる」という指摘もある。



「それは『単なるイメージ』ではないですか? 過去に海外でおこなわれた調査でも、カジノ建設と治安悪化の因果関係が証明された例は、聞いたことがありません。



たとえば、アメリカでは1990年代後半に、約5億円を投じた大規模な調査が実施されました。しかも、この調査を取り仕切った議長は、カジノ反対派でした。しかし、結果は『カジノを誘致した町で犯罪率の上昇は見られなかった』というものでした」



――日本のカジノに未来はある?



「結局のところ一番の課題は、海外での調査結果などの『客観的事実』を材料にしながら、冷静な議論で反対派を説得できるか……という点でしょう。



個人的には、もし実現すれば、世界に誇れるカジノが誕生するはずと思います。サービス業における日本人のきめ細やかさや丁寧さは、世界随一ですからね」



(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
津田 岳宏(つだ・たかひろ)弁護士
京都弁護士会。京都大学経済学部卒業。著書に「弁護士には聞きにくいー知って助かる!法律相談」「賭けマージャンはいくらから捕まるのか」など
事務所名:松枝法律事務所