2013年09月12日 16:50 弁護士ドットコム
アメリカのペンシルバニア州でこのほど、「忍者」のまねをしながら街を徘徊していた19歳の男が、夜間徘徊と社会の秩序を乱した容疑で逮捕された。
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AP通信によれば、容疑者は黒のフード付きトレーナーに黒の長袖のシャツ、黒のマスクに手袋という出で立ちで、黒の野球バッドを担いで、住宅街を徘徊していたという。
地元テレビ局によると、容疑者は全身黒ずくめで物陰に隠れながら、こそこそと動き回っていたことを認めたうえで、「忍術の特訓中だった」「警察が悪者を逮捕する手助けをしていた」などと主張している。一方、近隣住民は「むしろ泥棒に見えた」と話している。
確かに、もし夜に路上でそんな人にばったり出会ってしまったら、びっくりするだけでは済まない気もする。日本で同じようなことをしたら、罪に問われる可能性はあるのだろうか。福島隆弁護士に聞いた。
●日本でも「忍者のまね」が罪になる可能性がある
「アメリカのペンシルバニア州では、住宅などの周辺を夜間に徘徊するだけで罪になります。また、正当な目的に見合わない行動で、身体的な不安を生じさせることも罪になります。こういった州法の存在によって、この男は現行犯逮捕されたようです」
――日本にも同じような法律がある?
「このような法律は、犯罪となるかどうかが曖昧すぎると思います。日本では、戦前の治安維持法の拡大解釈により、誰がいつ逮捕されるのか予測のつかない事態に陥ったことの反省から、ペンシルバニア州のように曖昧な内容の法律は存在しません」
――すると、忍者の格好で夜間徘徊をしても、日本でなら法律違反にはならない?
「そうは言っても、忍者のまねが全く罪にならないとは限りません。
たとえば、愛知や京都などの迷惑防止条例では『人の身体に危害を加えるのに使用できるものを、不安を覚えさせる方法で携帯してはならない』とされています」
――忍者のコスプレがそれにあたる?
「この男は怪しい服装・行動にくわえ、野球のバットを携帯していたので、日本でも地域によっては、これらの条例違反として逮捕される可能性はあると考えられます。
ちなみに、同様の規定を持つ条例は、伊賀のある三重県、甲賀のある滋賀県にも見られます。現代では、安心して『忍者の修業』をするのは難しいかもしれません」
たしかに、夜間、黒ずくめの忍者スタイルで出歩けば、時と場合によっては「悪いことをするための変装」と受け止められ、通報されるケースもあるだろう。もしかしたら、「忍者の故郷である日本に来れば、夜に忍者の格好をしても大丈夫」と思っているアメリカ人もいるかもしれないが、必ずしもそうとは限りませんよ、と言っておきたい。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
福島 隆(ふくしま・たかし)弁護士
弁護士法人新さっぽろ総合法律事務所 社員弁護士
札幌市厚別区を中心に白石区、清田区、北広島市など地域の法律問題を多く手掛けている。
事務所名:新さっぽろ総合法律事務所