トップへ

部下から上司への「逆パワハラ」 上司によるパワハラと何が違うの?

2013年09月11日 15:50  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

むかつく上司に「10倍返し」ができたら、半沢某でなくても「爽快」だろう。だが、それも場合によっては「逆パワハラ」になってしまうかもしれない。ピンと来ないかも知れないが、厚労省の審議会は「部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるもの」も、パワハラに含まれるという報告書を出している。


【関連記事:ブラック企業の共犯者!? サービス残業大好きのブラック社員にどう対抗すればいい?】



「部下が身体的特徴を馬鹿にする」「部下たちに無視される」「乱暴な口を利かれる」「部署の飲み会から外される」……等々、上司側の悩み話は、ネットでも数多く見つかる。なかには、「部下によって社内に中傷ビラをまかれた」とか「あることないことを告げ口された」といった、かなり深刻なケースもあるようだ。



先の報告書は「逆パワハラ」もパワハラに含まれるという見解だったが、法的な扱いやその対処もパワハラと同じと考えて良いのだろうか。労働問題にくわしい白川秀之弁護士に聞いた。



●「逆パワハラ」が深刻な被害を生むケースも



「上司に対して、部下からのパワハラが成立することはあります。被害者の視点で、法的に考えた場合は、多くの共通点があります」



――逆パワハラを行った部下に対しては、どんなことが言える?



「たとえば上司は、逆パワハラをした部下に対して、違法なパワハラ行為によって受けた精神的苦痛の賠償を求めることができます。



また、部下が悪い噂を流したことが名誉毀損罪に該当する場合もあるでしょう」



――会社に対して責任を取れと言える場合もある?



「はい。パワハラの結果、職場環境が悪化した場合には、会社に対して安全配慮義務違反による損害賠償請求をすることもできます。



部下によるパワハラ行為で心労がかさみ、精神障害を発症し、自殺をしたことが労働災害と認定された場合もあります」



●「逆パワハラ」が成立するのは、上司権限が機能しない場合



――そうなってくると、「逆パワハラ」と「パワハラ」との違いは?



「一番の違いは、上司が部下に対する『指導・監督権限』を持っている点です。



そのため、まずは権限に基づいて、部下のパワハラ行為を止めさせるように指導することが上司には求められます。



パワハラが成立するのは、そのような権限が機能せず、部下によるパワハラ行為を防げない場合であると言えます」



――マネジメントの問題という側面も出てくる?



「そうですね。パワハラ行為を防止できない場合、上司としては、会社に対してパワハラ行為を行う部下に対する懲戒処分や配置転換を求めることも必要になると言えます。



ただ、そうすれば、部下を適切に指導、監督できなかったと評価され、能力不足と判断される材料となることもあり得ると言えます」



上司には、逆パワハラを避けるための危機管理能力が求められているのかもしれないが、いったんそういう「前門の虎、後門の狼」状態に陥ってしまえば、逆に対処も非常に難しいと言えそうだ。そうしたピンチの際にも、気軽に相談できる先があればいいのだが……。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
白川 秀之(しらかわ・ひでゆき)弁護士
2004年弁護士登録。一般民事事件を幅広く行っておりますが、労働事件を専門的に取り組んでおります。日本労働弁護団常任幹事、東海労働弁護団事務局次長、愛知県弁護士会刑事弁護委員会
事務所名:弁護士法人名古屋北法律事務所
事務所URL:http://www.kita-houritsu.com/