2013年09月10日 16:51 弁護士ドットコム
全員がニートで、全員が取締役。全国のニート約300人が集まって会社を立ち上げようという企画が話題を呼んでいる。
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その名も「NEET株式会社(仮称)」。仕事につかず、学校にも通っていないニートの若者たちが集まり、会社を設立しようというのだ。ただ、事業内容やビジネスモデル、オフィスなどは未定で、今後参加者で話しあって決めていくとしている。8月下旬の段階で、約340名が参加登録したという。
さらに変わっているのが、組織体系だ。「組織に属するのは嫌」と話す若者が多いことに着目し、全員が取締役に就任するのだという。全員が雇用されない事業主となることで、既成概念に縛られない自由で新しい事業主集団を作っていくとしている。
少数の立ち上げメンバー全員が共同経営者というベンチャー企業は珍しくないが、何百人も参加する会社で全員が取締役というのは聞いたことがない。法的には、こんな会社もアリなのだろうか。また300人も取締役がいたら、何か不都合なことがおきないだろうか。会社法にくわしい古金千明弁護士に聞いた。
●法的には「取締役300人」も可能
「会社法では、取締役の数の上限には制限はありません。会社の定款で定めた範囲内であれば、取締役の数を300名とすることも法的には可能です」
――取締役の果たすべき役割とは?
「取締役会がある会社では、会社の業務執行は、取締役の全員で構成される『取締役会の決議』において決定され、代表取締役が業務を執行することになります。取締役会がない会社では、会社の業務執行は『取締役の過半数』で決定され、各取締役が業務執行を行うことになります」
――300人も取締役がいると意思決定はかなり大変なのでは?
「そうですね。機動的な意思決定は難しくなるでしょう。テレビ会議等を活用するにしても、300人の取締役の日程を調整して議論の場を設けるだけでも、相当大変かと思います。
また、300人も取締役がいると、事業計画の策定、予算の配分、人事政策等、経営に関する踏み込んだ議論をして、意思決定を行うのは、かなりの困難を伴うのではないでしょうか」
――いちいち300人全員が話し合う必要はないのでは?
「取締役が多すぎるため、取締役全員での議論が難しい場合には、会社としての意思決定は、常務会や経営委員会等において、一部の取締役の判断で実質的になされてしまいがちです。
しかしその場合、取締役会は、常務会や経営委員会等の判断を追認するだけの機関となり、形骸化してしまって、実質的に機能しなくなってしまうおそれがあります。会社法上は、望ましい事態とはいえません」
――ということは「300人」いても意味はなかった?
「実務上は困難も多いでしょうね。ただ、新会社のプロモーションとしては非常に効果があったのではないかと思います」
●ビジネス判断としてはアリ?
――というと?
「会社を立ち上げる際には、いかに効率的にプロモーションを行うのかが重要な課題です。300人の取締役がいる会社というのはおそらく前例のない話ですので、すでにマスコミにも相当取り上げられています。広告で同様のプロモーション効果を出すためには、数千万円単位の費用を要したのではないでしょうか」
――話題にしてもらうことで、莫大な広告費を浮かすことができた?
「そうなります。様々な問題はあるにしても、新会社のプロモーション効果を狙ったビジネス判断としてはありかもしれません。NEET株式会社の今後の事業展開が注目されるところです」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
古金 千明(ふるがね・ちあき)弁護士
天水綜合法律事務所・代表弁護士。個人から法人(IPOを目指すベンチャー企業・中小企業、上場企業)に対するリーガルサービスを提供している。取扱分野は、企業法務、労働問題、M&A、倒産・事業再生、一般民事(離婚・男女関係含む)。
事務所名:天水綜合法律事務所