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「自分がやったのは恐喝で、強盗ではない」と容疑者……「恐喝」と「強盗」の境目は?

2013年09月02日 15:21  弁護士ドットコム

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「恐喝」と「強盗」。どちらもよく耳にする罪名だ。いずれも暴力や脅しによって金品を奪い取る犯罪で、よく似ているようにみえる。その境界線はどこにあるのだろうか。


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今年6月に神奈川県川崎市内の路上で、30歳の男性会社員が10代から20代の男女4人から殴る蹴るの暴行を受け、現金とキャッシュカードを奪われるという事件が起きた。読売新聞によると、4人は強盗容疑で逮捕されたが、そのうちの1人は「自分がやったのは恐喝で、強盗ではない」と供述しているという。



この容疑者の主張が通るかどうかはわからないが、そもそも「恐喝」と「強盗」の違いはどこにあるのだろうか。德永博久弁護士に聞いた。



●被害者の反抗をどこまで押さえつけたかがポイント



「強盗罪も、恐喝罪も、いずれも『被害者に恐怖心を生じさせて、財物を取得する犯罪』という点で、共通の性質を持っています。



また、両者は、犯罪行為の外形においても『暴行または脅迫行為を手段とした上で、被害者から金品を奪取する』という点で共通しています」



――犯罪の性質も、犯罪行為の見た目も共通であれば、いったいどこに違いがある?



「両者の違いは、『被害者の反抗する気力をどの程度まで抑圧する暴行・脅迫が行われたか』という点にあります」



――つまり、被害者の気力がどこまで押さえ込まれたかの問題?



「そうですね。具体的には、強盗罪が成り立つためには、手段として『被害者の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫』が行われていなければなりませんが、恐喝罪は『被害者の反抗を抑圧するにいたらない程度の暴行・脅迫』で成立します」



――そんなことを、どうやって判定している?



「実務上は、暴行・脅迫が『被害者の反抗を抑圧する程度』であったかどうか、つまり『強盗』か『恐喝』かを判断する際には、



(1)加害者の言動


(2)加害者と被害者の年齢・性別・体格・人数等の比較


(3)凶器所持の有無



などがキーポイントになります。



しかし、それだけで機械的に決まるわけではありません。一切の事実関係を踏まえた上で個別具体的に判断されることになります」



――ということは、「加害者側」がどんな風に考えていても、それはあまり関係ない?



「そうですね。加害者の意図によって、強盗行為と恐喝行為のいずれかが決定されるわけではありません。



したがって、たとえ加害者が『自分は恐喝行為を行ったつもりである』と主張しても、その行為が『被害者の反抗を抑圧する程度のもの』であれば、恐喝罪ではなく強盗罪が成立します」


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
德永 博久(とくなが・ひろひさ)弁護士
第一東京弁護士会所属 東京大学法学部卒業後、金融機関、東京地検検事等を経て弁護士登録し、現事務所のパートナー弁護士に至る。職業能力開発総合大学講師(知的財産権法、労働法)、公益財団法人日本防犯安全振興財団監事を現任。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
事務所URL:http://www.ogaso.com/