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「見せしめと脅しが目的の恫喝訴訟だ」 米軍基地反対で「国に訴えられた」住民

2013年08月31日 19:51  弁護士ドットコム

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米軍のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に反対して座り込みを続け、「国に訴えられた」住民がいる。沖縄県東村の伊佐真次さんと安次嶺(あしみね)現達さんだ。この問題を取り上げた琉球朝日放送制作のドキュメンタリー映画『標的の村』が現在、公開されている。2人は8月26日に都内で記者会見を行ない、今回の訴訟や米軍基地をめぐる問題について訴えた。


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伊佐さんと安次嶺さんの家族が住む東村高江地区は、米軍の「北部訓練場」に隣接している。米軍は、北部訓練場の一部返還(SACO合意)に伴い、6つのヘリパッドを高江地区周辺に移設しようと計画。それを知った2人は2007年に他の住民らと「ヘリパッドいらない住民の会」を立ち上げ、反対運動を開始した。住民たちは訓練場のゲート前に座り込み、工事関係者に納得のいく説明などを求めて抗議を続けた。


●国はヘリパッド建設に反対する住民を「通行妨害」で訴えた


一方、国は2008年、同会メンバーら15人(うち1人は後に取り下げ)に対して「通行妨害禁止」の仮処分申請を那覇地裁に申し立てた。那覇地裁は伊佐さんと安次嶺さんの2人に対して申立を認め、「通行妨害禁止」の仮処分を決定した。


国はさらに2010年、2人に対して「妨害行為の禁止」を求める訴訟を提起。那覇地裁は2012年3月の判決で、伊佐さんが5回にわたり、国職員などの活動を物理的方法で妨害したことが「純然たる表現活動の範ちゅうを超えている」と指摘、将来にわたって物理的方法による通行妨害行為をしないよう、伊佐さんに対して命令した。一方で、安次嶺さんに対する請求は棄却された。


伊佐さんは控訴したが、2013年6月に2審(福岡高裁那覇支部)でも敗訴、同7月に最高裁へ上告し、現在も係争中だ。


●「これは反対運動に対するSLAPP(恫喝訴訟)だ」


安次嶺さんは「通行禁止の仮処分申請は当初、7歳になる私の娘も対象とされていた(後に取り下げ)。証拠もずさんで、見せしめと脅しが目的だった。かえって団結してがんばれるという側面もあったが、足が遠のいた人もいた」と憤りを隠さない。


伊佐さんも「これは強大な力を持った国が、裁判で反対運動を押さえ込もうとする『SLAPP(恫喝訴訟)』だ。戦争のための訓練場は憲法違反だ。反対運動を押さえつけるのも憲法違反だ。憲法に則った裁判をしてほしい」と会見で訴えた。


ヘリパッドは2013年になって、6つのうちの1つが完成したが、反対運動の座り込みはいまだ続いている。2人はこの映画を通じて、国や米軍が沖縄でどんなことを行っているのかを、多くの人に知ってほしいと話していた。


ドキュメンタリー映画『標的の村』は、現在劇場『ポレポレ東中野』(東京都中野区)で上映中だ。今後、大阪や沖縄など全国各地で順次上映が予定されている。


(弁護士ドットコム トピックス)