2013年08月27日 18:01 弁護士ドットコム
いまの日本は核家族化が進み、「夫婦と子ども1人の3人世帯」というのが典型的なファミリー像となった感がある。しかしなかには、サザエさんのように、夫と子どものほか、両親や兄弟とも暮らしているという昔ながらの大家族もある。
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大家族はにぎやかで楽しいだろうが、家計を支える立場の者にとっては大変だ。ネットの相談サイト「発言小町」には、「妹から家賃をもらいたい」という女性の投稿があった。この女性は、夫と子ども一人に加え、両親と妹と暮らしている。サザエさんと似たような家族構成だが、妹は小学生ではなく、20代後半の大人なのだという。
このたび、世帯主である夫が住居を新築した。それを機に、妹から「家賃」をもらうことができないかと考えているのだ。自分の妹に家賃を請求するというのは、ちょっと違和感がある気もする。民法も「兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めている。しかしこの女性としては、成人しているのだから住宅費用の一部を負担してほしいということなのだろう。
では、もし妹が「家賃を払いたくない」と言った場合、この女性は裁判に訴えて、「家賃」を請求することができるだろうか。親族間の法律問題にくわしい田中真由美弁護士に聞いた。
●親族であっても「賃貸借契約」を締結する必要がある
「裁判で家賃を請求するには、賃貸約契約を締結していることが前提となります。同居している妹との間でこの契約を結んでいなければ、家賃を請求することはできません」
田中弁護士はこう指摘する。たとえ家族間であっても、正当に家賃を要求するためには、賃貸借契約を結ばなくてはならないのだろうか?
「そうですね。親族にも住宅費用の一部を負担してほしいと考えるのであれば、賃貸借契約を締結しておくことが必要です」
いくらなんでも、契約を結んで支払いがなければ裁判……というのは、同居の家族としては、他人行儀にすぎる気もする。それ以外に、何か選択肢はないのだろうか?
「賃貸借契約を締結していないなら、まずは話し合いをすべきでしょう。同居している親族に住宅費用の一部を負担してほしいなら、直接話し合うことをお勧めします。
家族だけで話がつかない場合には、裁判官や専門家などの第三者を交えて話し合う『調停』という手続きも利用できます。いきなり裁判というのではなく、まずはそういった話し合いをお勧めします」
そもそも家族の形は多様だし、それぞれが「負担できる額」は、個々の収入などによっても大きく異なるだろう。今後も一緒に暮らすことが前提なのであれば、不公平感についても、正面から話し合って解決できる関係性を築く必要があるのではないだろうか。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
田中 真由美(たなか・まゆみ)弁護士
あおば法律事務所共同代表弁護士。熊本県弁護士会所属。「親しみやすい町医者のような弁護士でありたい」がモットー。熊本県弁護士会両性の平等に関する委員会委員長。得意分野は離婚、家事全般、債務、刑事事件、少年事件。
事務所名:あおば法律事務所
事務所URL:http://www.aoba-kumamoto.jp/