2013年08月23日 19:31 弁護士ドットコム
テレビや冷蔵庫、エアコンなど、スマートフォン(スマホ)と連携した家電が次々と登場している。これらは「スマート家電」と呼ばれ、外出時でもスマホを使って自宅のエアコンを操作したり、照明をつけたりすることができる。
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ところが、米セキュリティ会社によると、日本メーカー製のスマホ対応トイレにセキュリティ上の脆弱性が見つかったという。このトイレはスマホをリモコン代わりに、シャワー洗浄の位置や水量などを設定できるが、この脆弱性を突けば、他人が勝手にシャワー洗浄や温風乾燥、フタの開閉などを遠隔操作できるようだ。トイレが突然、意図しない動きをしたら……。特にそれが用を足している最中だったら、動かされた方は大パニック間違いなしだろう。
遠隔操作といえば、他人のパソコン(PC)を勝手に操って犯罪予告をしたとされる事件が大きな話題になったが、スマホ対応のシャワートイレを勝手に操作することも、やはり何らかの犯罪にあたるのだろうか。石下雅樹弁護士に聞いた。
●不正アクセスに加え、器物損壊罪、暴行罪、傷害罪もあり得る
「結論から言えば、不正アクセス禁止法でいう、『不正アクセス行為』に該当する可能性があります」
――「不正アクセス行為」って、そもそも何?
「ネットワークを通じ、他人の識別符号(パスワード等)を無断で入力するなどして、アクセス制御機能による利用制限を解除し、利用できる状態にする行為です。なお、不正アクセス行為を行った場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑罰を受けることがあります」
――トイレを動かすだけでも「不正アクセス」になり得る?
「不正アクセス禁止法の対象は、『ネットワークに接続している電子計算機(コンピュータ)』全般で、PCやサーバには限定されていません。シャワートイレなどの家電製品でも、ネットワーク接続のコンピュータを含む機器であれば、対象となり得ると考えられます」
――セキュリティに脆弱性が見つかったトイレも、その対象?
「話題のシャワートイレは、Bluetoothという通信規格による無線ネットワーク接続で、外部からの操作が可能なコンピュータを搭載しています。ですから法律の対象となる余地があるでしょう。他人が脆弱性を利用し、ネットワークを介してアクセス制御機能を解除した上で勝手に遠隔操作すれば、『不正アクセス行為』に該当する可能性があると考えられます」
――勝手にウォシュレットを出されたら、恐怖だ……
「そうですね。たとえば、他人のトイレを不正に操作して、故意に強く水を出してその住宅の壁を濡らしたり、座っている人に強い水をぶつけたりすれば、刑法の器物損壊罪や暴行罪等に当たる可能性があります。
さらに、故意にシャワー洗浄・フタ開閉・消音音楽再生などを連続的に行って住人に不快感・恐怖感を与え、ノイローゼに陥らせるなどした場合には、傷害罪が成立する可能性もあります」
今後、ネットワーク機能を持つ家電はどんどん増えていくだろう。今回指摘されているような「脆弱性」をどうやって無くし、また見つかった場合にどう対処していくのかは家電メーカーの大きな課題だろう。身近な家電を使う際にも「セキュリティ」に配慮しなければならない時代が、目の前に迫っているのかもしれない。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
石下 雅樹(いしおろし・まさき)弁護士
弁護士法人クラフトマン 代表弁護士・弁理士
ITに関する法律、特許・商標・著作権等の知的財産権、国際取引、労働法、会社法務等のビジネスローを中心に業務を行っている。
事務所名:クラフトマン新宿特許法律事務所
事務所URL:http://www.ishioroshi.com/