2013年08月22日 19:31 弁護士ドットコム
定額でJRの普通・快速列車などが乗り放題になる「青春18きっぷ」。夏休みにこの「18きっぷ」を利用して、のんびりした旅を楽しんでいる人もいるだろう。だが、ときどきトラブルも起きる。18きっぷは、1枚の切符を5日間使う仕組みだが、大事な切符を1日目に「捨ててしまった」という人がいるのだ。
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ツイッターで7月末に話題になった一連のツイートによると、この人物は青春18きっぷに付いてくる4枚の注意書きを切符だと思い込んだのだという。つまり切符が5枚綴りだと勘違いし、1日目が終わったときに切符を捨ててしまったらしい。この人物は後から「説明が足りなかった」として再発行を要求したが、駅員に「仕組みを知らない方が悪い」とはねつけられてしまったという。
ツイッターでは、「説明を読めば勘違いなんかしない」と、軽い炎上状態になったが、注意書きが切符と全く同じ大きさ・紙質であることから「確かにわかりにくい」と同情する声もあった。今回のように、勘違いで切符を捨ててしまった場合、何かの法律に基づいて、再発行してもらうことはできないのだろうか。内山知子弁護士に聞いた。
●切符の効力は「旅客営業規則」に定められている
「結論からいえば、残念ながら、再発行してもらうことはできないでしょう」
――どうしてそう言える?
「切符を買って電車に乗るというのは、法的には『契約』と見なされます。かといって、電車に乗るたびに、いちいち契約書を作るのは現実的ではありません。ですから、あらかじめJRが決めた『旅客営業規則』という運送約款(やっかん)がその代わりになります。
切符の使い方や効力などは、その旅客営業規則の中に定められています。つまり今回は、そこにどんなことが書いてあるかがポイントです」
――それは、JRが一方的に決めた内容なのでは?
「そうですね。そこで、不公平にならないように、国の規制があります。国交大臣へ届出・認可される必要がありますし、その内容を一般の人に公開する義務もあります。
また、一方的に消費者に不利な条項が含まれていた場合など、消費者契約法に反するような条項は無効となる余地があります」
――JRの旅客営業規則は、そういった基準はクリアしている?
「そうですね。クリアしています。その内容は、例えばJR東海なら、ウェブサイト(http://railway.jr-central.co.jp/ticket-rule/cjr-regulation/)などで見ることができます。同社の場合、その内容を一般向けにした『きっぷのルール』というページもあります」
――今回のようなケースについても、約款で決まっている?
「切符などを紛失した場合の規定は、JR東海の旅客営業規則268条~270条に書いてあります。
これによると、紛失したら原則としてもう一度切符を買いなおさなければならず、後に発見できた場合に払い戻しを請求できるという規定になっています。なお、JR各社で違いはありません」
――消費者側に一方的に不利な内容とはいえない?
「一方的に消費者に不利な内容とはいえません。その人が本当に切符を紛失したのか、それとも売却したのかは、JR側には判断がつきませんから。
また、説明責任も十分に果たしていると言えるでしょう。青春18きっぷの使い方は、ホームページでも解説されていますし、切符と一緒に注意書きも渡されていますからね」
その注意書きのせいで勘違いをしたというのは、何とも皮肉な話ではあるが……。買い間違いや勘違いを防ぐという意味でも、切符を購入する際には、よく確認したほうがよさそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
内山 知子(うちやま・ともこ)弁護士
第二東京弁護士会 消費者問題対策委員会委員(平成21年度、22年度は副委員長(医療部会長兼任))、子どもの権利に関する委員会委員
事務所名:佐藤勉法律事務所
事務所URL:http://niben.jp/orcontents/lawyer/detail.php?memberno=3767