2013年08月18日 14:10 弁護士ドットコム
東京都内で小学2年生の男子児童と中学3年生の女子生徒が相次いで切りつけられたという通報があったが、それは「作り話」だった——。そのような事実が7月下旬、警察の発表によって明らかになった。
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読売新聞によると、いずれも子どもの「うそ」を信じた親が警察に通報した。男児と女子生徒に面識はなかったが、女子生徒は「男児が切られた」という話を通行人から聞いて知り、自分も切られたと自らの親に伝えた。2人はいずれも「親に心配してもらいたくてうそをついた」と話した。警察は「悪意はなかった」として、注意にとどめる方針だという。
今回は子どもが親の注意を引くためのうそということで、なんとか「注意」で済んだようだ。しかし、うその通報は警察にとって大迷惑だし、地域の人など関係者にも悪影響がある。このような行為を大人がいたずらで行えば、何らかの罰を受けることになるのだろうか。平野由梨弁護士に聞いた。
●うそで他人を逮捕させると、『虚偽告訴』という犯罪になる
「うその犯罪を警察に通報すれば、軽犯罪法1条16号の『虚構の犯罪または災害の事実を公務員に申し出た者』に当たり、『拘留又は科料』という刑で処罰される可能性があります。
拘留というのは、1日以上30日未満の期間で身柄拘束を受ける刑で、科料は、1000円以上1万円未満の支払いが命じられる刑罰です」
——たとえば、うそをついて他人を逮捕させたような場合でも同じ?
「いえ、そうなると、話は全く別です。
特定の人に刑事処分等を受けさせる目的で、虚偽の通報・告訴などをした場合には、刑法172条の虚偽告訴等の罪にあたります。こちらは重い罪で、3ヶ月以上、10年以下の懲役刑が規定されています」
——確かにそんなことをされたら、迷惑どころの話ではない。
「そうですね。虚偽の申告をされた側は、名誉や信用を傷つけられ、また無用な捜査の対象にされる等の損害を被ります。
うその通報でそういった事態を巻き起こしてしまった場合、被害を受けた人に損害賠償を請求されたり、訴えられて民事裁判になる可能性もあります。判決次第では、被害者に損害賠償金を支払わなくてはならなくなるでしょう」
今回あったような事件では、まず必要なのは子どもたちへのケアだろう。しかし、寂しさからつく「うそ」が、場合によっては他人を傷つけ、重大な犯罪になってしまうことがある。大人たちは、そのことをしっかりと心にとどめておきたい。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
平野 由梨(ひらの・ゆり)弁護士
藍法律事務所所長弁護士。愛知県弁護士会高齢者・障害者総合支援センター運営委員会委員。名古屋市障害者・高齢者権利擁護センター事業運営委員会委員。
事務所名:藍法律事務所
事務所URL:http://www.ai-law.jp