トップへ

「給料差し押さえ」で会社に借金がバレたら、クビにされても仕方ない?

2013年08月17日 12:41  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

「カードの返済が滞り、給料を差し押さえられてしまいました」。ネットの相談サイトにこんな悩みが投稿されていた。借金が返せないと、ついには給料の差し押さえという事態に至ることもある。


【関連記事:本人が拒んでも「受信契約成立」 NHK訴訟判決はアリなのか?】


給料を差し押さえられれば、その分だけお金が使えなくなるだけでなく、自分が借金を抱えていることが会社に知られてしまうことになる。たとえば、借金の原因がギャンブルやキャバクラ通いだったりすれば、怒った社長に「自己管理ができないなら辞めてくれ」と言われるかもしれない。


では、多額の借金を抱えて給料を差し押さえられた社員は、会社の信用を失墜させる恐れがあるとして、懲戒解雇されても仕方ないのだろうか? 労働問題に詳しい竹之内洋人弁護士に聞いた。


●よほどのことがない限り、懲戒解雇にはならない


「会社を辞めなくてはならないほどのことではありませんし、クビにもなりません。


ただ、もし社長に言われて辞表を書いてしまったりすると、解雇でなく『自主退職である』という扱いにされかねません。くれぐれも、辞表を出すようなことはしないでください」


——どうして、そういえるのか?


「労働契約法上、合理性と相当性がない懲戒解雇は無効とされているからです(同法15条、16条)。


懲戒解雇は、会社が下す処分として最も重い内容です。労働者にも重大な不利益をもたらしますから、『よほどの行為』でなければ懲戒解雇にふさわしいとは認められないのです」


——「借金を返せないこと」は、よほどの行為にはあたらない?


「まず、私生活上の借金は、労働者の義務である仕事(労務提供)とは無関係です。


私生活上のことでも、懲戒処分が認められる場合はありますが、それは会社の信用に大きな影響を与えて、企業運営に支障をきたすようなケースに限られます」


——労働者が金を返さないことは、会社のイメージを落とすのでは?


「それでも、借金で給料を差し押さえられたという程度では、会社に重大な信用失墜をもたらしたとまでは言えません。懲戒解雇の相当性はなく、解雇は認められないでしょう。借金の理由も関係ありません」


確かに、すぐに返せない借金がある状態で、収入まで途絶えたら、本人の生活が立ちゆかなくなるのは明白だ。こういうときこそ全力で仕事に打ち込んで、業務に支障が生じていないと証明すべきなのかもしれない。最後に、竹之内弁護士は「借金返済に困ったのなら、給料の差押えまでに至ってしまう前の段階で、弁護士に債務整理の相談をすべきです」とアドバイスしていた。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
竹之内 洋人(たけのうち・ひろと)弁護士
札幌弁護士会、日本労働弁護団員、元日本弁護士連合会労働法制委員会委員
事務所名:公園通り法律事務所
事務所URL:http://www.pslaw.jp/