2013年08月13日 19:00 弁護士ドットコム
夏の夜空を彩る大輪の打ち上げ花火。花火大会では近年、アニメキャラクターをかたどった花火が登場し、観客を楽しませている。キャラクター花火が打ち上がるたび、「あっ! キティちゃんだ」「こんどはドラえもんだ」と、あちこちから子供たちの歓声があがる。そこでふと疑問が浮かんだ。あれって、著作権的に問題はないの?
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キャラクターの形をした花火は「型物」と呼ばれる花火の一種。玉のなかに星(火薬)を平面上に並べることで、空に巨大な絵を描く。ハートやアルファベットといったシンプルな図案が多いが、人気キャラクターを模したものも次々と登場しているようだ。
だが、有名キャラクターには著作権がついてまわる。キャラクター花火にも著作権者の許可や著作権料の支払いが発生するのではないだろうか。一瞬のこととはいえ、何万人もの観客を前に著作物を「描く」のだ。もし許可なくやっていた場合、問題とならないのだろうか。南部朋子弁護士に聞いてみた。
●空に浮かんだ花火そのものは、著作権法上の「複製」と言いがたい
「まず、前提として、キャラクターの絵は著作物として著作権で保護されています。著作権者は、その著作物を他人が無断で複製することを禁止することができます」
――キャラクター花火は複製といえる?
「まず、著作物の複製といえるには、できあがったものが元の著作物に類似している必要があります。キャラクター花火といっても、そのキャラクターの特徴を再現しているレベルによっては、複製にはあたらないこともあります。
また、著作権法でいう複製は、『有形的な再製』を指すとされ、著作物を媒体(紙、フィルム、磁気テープ・ディスクなど種類を問いません)に固定してはじめて『複製』したことになります」
――それでは「花火」の場合は?
「キャラクター花火を打ち上げる行為そのものは、キャラクターの絵を媒体に固定するわけではないので、そもそも『複製』とは言い難いと思われます。
ただし、キャラクター花火の花火玉の作成段階で、花火玉の設計図を描いたり、火薬を平面上に並べたりする行為は、紙面や花火玉という媒体にキャラクターの絵という著作物を固定するという複製行為にあたると評価される可能性はあります」
――結局のところ、セーフ・アウト、どちらと考えれば良い?
「判断が微妙な場合も多いと思われます。ただ、著作権者の許可なく『キャラクター花火』と明確にアナウンスして花火を打ち上げると、問題になる可能性が高いといえるでしょう。また、権利者の許可なくキャラクターの名称等を使うのは、不正競争防止法や商標法との関係で問題があり、やめるべきでしょう」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
南部 朋子(なんぶ・ともこ)弁護士
著作権法、商標法など知的財産法や国際取引をめぐる法律問題を担当している。ロボットをめぐる法律問題についても研究中。主な著書に『図解入門ビジネス 最新 著作権の基本と仕組みがよ~くわかる本(第2版)(秀和システム)(共著)』。
事務所名:弁護士法人リバーシティ法律事務所
事務所URL:http://www.rclo.jp/