2013年08月10日 14:30 弁護士ドットコム
アルバイト店員の悪ふざけが元で、チェーン本部が謝罪する事態が相次いでいる。
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発端の一つは、ローソンの店員がアイスクリームのケース内で寝そべる写真がフェイスブックに投稿され炎上した事件だ。ローソン本部は7月中旬、謝罪したうえで、問題がおきた店舗とのフランチャイズ契約を解除した。
また、ハンバーガーチェーン「バーガーキング」でも、男性アルバイト店員が、大量のバンズ(ハンバーガー用のパン)の上に寝そべる写真をツイッターに投稿し炎上、本部が謝罪する事態となっている。
食べ物の上に寝そべったら当然「アウト」だし、そういった写真をネットで公開したら「ヤバイ」のは明らかに思えるが……。企業側はどうやってこうしたトラブルを防げばいいのだろうか。企業のコンプライアンスにくわしい山口利昭弁護士に聞いた。
●ネットやリアルの『共感』が、彼らを駆り立てる
「問題を防ぐためにはまず、『彼らはなぜ、そんなことをするのか』を理解する必要があります」
――何が原因と考えるべきなのか?
「不適切な行動をとる従業員のそばには、写真を撮ったり、行動をあおったり、進んでネットに投稿してあげたりする共感者がいます。そしてネット上にも、これを見て共感する仲間うちの狭い社会があります。
彼らを不適切な行動に駆り立てているのは、このようなリアル・ネットでの『共感』だと思います」
――つまり、自分の仲間に「ウケる」ためなら、一般の人から非難されても良いと考えているということ?
「いえ、むしろ『本人たちは非難されるとは全く思っていない』というケースが、かなりあるのではないでしょうか」
●外部からの「ツッコミ」を意識できない
――どうして、そんな発想になる?
「物心ついたときからネット環境があたりまえの時代に育った世代は、ネットの恐ろしさについて比較的、無自覚に思えます。なかには、自分たちがネット上に作り上げた狭い社会の外側から、ツッコミが入るということをあまり意識できない人もいるはずです。
そういう人たちにとっては、自分たちの不適切な行動によって会社が世間に謝罪をする、といったことは、『想像の範囲外』ではないでしょうか」
――それでは、本部側はどう対処すればいい?
「罪悪感を抱かない人たちの行動を、企業だけで直ちに抑止することは困難ですが、やれることはあります。
たとえば、(1)SNSの世界は共感者だけの世界ではないことを地道に教育すること、(2)店舗内の人事政策で、リアルの世界の共感者をできるだけ減らすこと……などによってトラブルを未然に防ぐことも、大切になってくるのではないでしょうか」
確かに、誰にも見せられない「ネタ」をあえて行う意味はない。ネット投稿の危険性を教えて動機を奪えば、問題行動そのものの抑止にも繋がるだろう。それにしても、企業がそんな教育まで行わなければならない時代が来るとは……。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
山口 利昭(やまぐち・としあき)弁護士
大阪弁護士会所属、日本弁護士連合会司法制度調査会・社外取締役ガイドラインPT委員
日本内部統制研究学会理事、日本公認不正検査士協会理事
事務所名:山口利昭法律事務所
事務所URL:http://yamaguchilawoffice.web.fc2.com/index.html