2013年08月09日 18:41 弁護士ドットコム
まさか「当たり」がないなんて……。大阪府警は7月下旬、大阪市内の祭りで、当たりの存在しない「くじ」を販売した露店アルバイトの男を、詐欺容疑で逮捕した。
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報道によると、男は祭りの露店で「プレイステーション3」や「Wii U」といった人気ゲーム機を景品として、1回300円、2回500円のくじを販売していた。ところが、1万円以上をつぎ込んでも当たらなかった客が警察に相談し、警察が露店内を捜索したところ、そもそも当たりくじが入っていなかったことが発覚した。男は容疑を認めているという。
今回のケースは、そもそも当たりくじが「ゼロ」だったようだが、たとえば当たりくじが入っているものの、ほとんど当たる見込みがないような場合はどうだろうか。確率は低くても、当たる可能性がほんの少しでもあれば、詐欺とはならないのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。
●くじが「客の期待を著しく下回る場合」には、詐欺罪にあたる可能性がある
まず前提として、今回報道されているような容疑は、詐欺罪にあたるのだろうか?
「くじ引きに、当たりくじが存在しないと知っていたら、誰もそんなくじは購入しませんね。客は『当たる可能性がある』ということを前提にして……言い換えると『当たると誤解して』くじを購入していると言えます。
さて、仮に報道されていることが事実だとした場合、露店アルバイトの男は今回、(1)客が誤解をしていることを分かっているのに、(2)当たりくじがないという真実を黙って、(3)客からくじの代金をだまし取ったと言えます。
他人が誤解していることを分かっているのに、真実を黙ったまま、金品を受け取れば、『詐欺罪』にあたります」
それでは、当たりの可能性はあるが、当選確率が極端に低い場合はどうなるのだろうか?
「その場合、客がどのような期待をしているかを合理的に判断することになります。
露店などのくじでは、くじの箱の中に入れることができる『くじ』の総数には限りがあります。また、高額商品の『当たりくじ』が何本も入っているという期待までは、客も通常はしないでしょう。
したがって、そういったくじの場合、1本でも当たりが入っていれば、詐欺罪が成立することはまずないといえます」
つまり、客はくじや箱の外見、景品の値段などから、およその当選確率を推測して購入しているので、その期待を極端に裏切るようなケースでなければOKということか。それでは電子ルーレットなどで、客が当選確率を推測できなければどうなるのだろう?
「確率が外から判断しにくい電子的なくじなどの場合は、判断が微妙になります。たとえば、1回100円で大当たりの景品が1万円前後なのに、当選確率が10万分の1しかないというケースなど、客の期待を著しく下回るといえる場合には、詐欺罪に当たる可能性があるでしょう。
また、当選本数などをはっきりと公言・明記しておきながら、これを下回る当たりしかない場合にも、詐欺罪にあたる可能性が出てきます」
今回は、諦めなかった客の粘り勝ちと言えるかもしれない……が、伊藤弁護士の話を踏まえると、そもそも確率が判然としないくじに手を出すということ自体、結構なリスクといえそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年弁護士登録。横浜弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:市役所通り法律事務所
事務所URL:http://www.s-dori-law.com/