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「セクシーすぎるからクビ」 そんな理由の「解雇」は認められるか?

2013年08月08日 17:10  弁護士ドットコム

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「女性として魅力的すぎるから解雇」。こんな理由で職を失った女性がアメリカにいる。女性は「不当な解雇」だとして裁判所に訴えたが、その主張は認められなかった。


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裁判を起こしたのは、米アイオワ州に住む歯科助手のメリッサ・ネルソンさん。10年以上にわたり歯科医院で働いていたが、雇用主の歯科医ジェームズ・ナイトさんから「魅力的すぎるので、結婚生活の脅威となる」として、解雇を告げられた。



二人に男女関係はなかったというが、ナイトさんがネルソンさんに対して「体を強調する服装は気が散るからやめてほしい」と注意したり、ネルソンさんの妻が二人の関係を疑ったりすることがあったという。解雇に納得のいかないネルソンさんは雇用主のナイトさんを訴えたが、アイオワ州の最高裁は「違法な性的差別には当たらない」と判断し、訴えを退けた。



これはアメリカでの判決だが、もし日本で同じようなことが起きたら、どうだろう。男性の雇用主が女性従業員を「魅力的すぎるから」「セクシーすぎるから」という理由で解雇することは許されるだろうか。女性を取り巻く労働問題にくわしい楓(かえで)真紀子弁護士に聞いた。



●日本の労働契約法は「解雇が認められる場合」を制限している



「解雇とは、労働契約を使用者側が一方的に解除することをいいますが、この解雇をあまりに簡単に認めると、労働者の生活が脅かされてしまいます。



そのため、日本においては、労働契約法で『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする』(第16条)と規定しており、解雇が認められる場合を制限しているのです」



――日本で「客観的に合理的な理由がある」として、解雇が認められるのはどんなケース?



「実際の裁判においても、限定的な場合に限られています。たとえば、勤務態度不良、業務上の著しい不適格、協調性の欠如、不安全行動の常習、職務怠慢、重大な規律違反、重大な業務命令違反や職務遂行違反、信用失墜行為がある場合、経営上の必要がある場合などです」



――ネルソンさんの場合は?



「日本で裁判になれば、解雇は無効と判断されるでしょう。ネルソンさんは、歯科助手として10年以上にわたり勤務しており、労働能力や適格性に問題があったわけではなく、勤務態度の不良や、職務怠慢な事情もなかったものと思われます。『魅力的すぎる』という理由で、長年問題なく勤務してきた従業員を解雇することに、客観的に合理的な理由があるとは到底いえないでしょう」



――雇用主のナイトさん夫妻にとって、「結婚生活の脅威」になっていたようだが?



「確かに、ナイトさんの妻は二人の関係を疑っていたようですし、ネルソンさんが魅力的すぎることにより、歯科医院内の『職場の秩序や風紀を乱す、または、乱すおそれがあった』とも考えられます。



しかしながら、本ケースでは、実際に不倫関係があったわけではないようですし、魅力的すぎて浮気心を抑えられない…というのは、雇用主の私的な感情にすぎません。このような理由で、能力や勤務態度に問題のない従業員を一方的に解雇することは、雇用主として問題があり、信義に反する行為です。合理的な理由がある解雇とは認められないでしょう」



――雇用主のナイトさんは『体を強調する服装は気が散るからやめてほしい』と注意していたようだ。もし、こういった注意を守らなかったとしたら、解雇できる?



「服装や髪型、容姿は、労働者の人格や自由に関する重要事項ですから、それを理由とする解雇は、原則として認められません。



雇用主は、職場内の秩序維持のため、労働者に必要な規制、指示、命令等を行うことができます。しかし、そういった重要事項への制限は、職場の円滑な運営上、必要かつ合理的な場合に限られます。



たとえば、明らかに露出が激しいなど、従業員として不適切な服装で勤務し、再三にわたって注意しても態度を改めず、職場の秩序や風紀を乱したと評価できるような場合、その業種や職場内外への影響によっては、解雇が認められる場合があるかもしれません。しかし、そのようなよほどの事情がない限り、服装を理由とする解雇は認められないでしょうね」


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
楓 真紀子(かえで・まきこ)弁護士
2001年弁護士登録(第一東京弁護士会)。生まれ育った「西新宿」にて、2009年にかえで法律事務所を開業。離婚、相続などの家庭問題、男女間のトラブル、職場におけるセクシャルハラスメントなど、女性を取り巻く法律問題を多数扱う。一児の母として子育てにも奮闘中。
事務所名:かえで法律事務所
事務所URL:http://www.kaedelaw.jp