2013年07月27日 15:00 弁護士ドットコム
東京23区の中心に位置する千代田区。ここではタバコを吸うのが、ますます難しくなるかもしれない。千代田区は2010年4月から、路上における喫煙を区内全域で禁止しているが、新たに公園についても「分煙・禁煙」とするルール作りに乗り出したと報道されている。
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嫌煙家の公園利用者にとっては大歓迎の方針だろうが、一方で喫煙者にとっては、「吸える場所」がさらに少なくなることになる。この報道を受けて、ネットでは愛煙家から「喫煙は合法のはずなのに、これでは事実上の禁止だ」「喫煙者から人権を奪うつもりか」といった不満が湧き上がっている。
千代田区がこのような方針を決めたのは、喫煙者たちがたくさん公園に集まっているという苦情のためだというが、その背景には会社や公共の場所での禁煙化が進み、喫煙できる場所がほとんどなくなってしまったという事情がある。
このような行政による規制は、愛煙家の「タバコを吸う権利」を侵害することにならないのだろうか。野村創弁護士に聞いた。
●喫煙可能な場所の整備も必要だ
「タバコを吸う権利は、憲法13条の幸福追求権により、一定の保護に値する権利とは言えます。ただし、これは『国家が禁煙を強制することはできない』という程度の意味合いだと考えるべきでしょう。
タバコの煙に一定の有害性が認められることや、嫌煙家も同様に『タバコの煙を吸わされない権利』を持っていることを考えれば、『いついかなる場所においてもタバコを吸える』という強固な権利とまでは言えません。
したがって、公園での喫煙を禁止する条例は、規制の目的とその手段が合理的であれば、直ちに違憲であるとは言えないと考えます」
――しかし、実際には「吸える場所」がどんどんなくなっている。
「そうですね。公園での喫煙が問題となる背景には、喫煙場所が制限された結果、一部のスペースに喫煙者が集中しすぎていることがあります。意地悪な見方をすれば、『規制が新たな問題を発生させてしまった』とも言えるのではないでしょうか?
千代田区は無料喫煙所の設置などの対策もしているようですが、実際にはまだ5ヶ所ほどしかないようです。愛煙家はこの点に違和感を覚えているのではないかと思います」
――条例で喫煙場所を制限するなら、逆に、喫煙できる場所もしっかりと設ける必要がある?
「はい。無料喫煙所の数を増やすなど、『愛煙家』の権利に対する配慮も併せて行わなければ、新ルールへの理解はなかなか得られないでしょう。
確かに『嫌煙家の権利』に配慮すれば、公園の禁煙化・分煙化はやむを得ない部分があると思いますが、このまま過度に規制が強化されれば、いつかは『違憲』の問題を引き起こすことになるかもしれません」
もともと喫煙者も、決して他人に煙を吸わせるために、タバコを吸っているわけではない。他人に迷惑をかけずに喫煙できる場所がもっと増えた方が、タバコが嫌いな人にとっても、より暮らしやすい環境ができるのかもしれない。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
野村 創(のむら・はじめ)弁護士
平成22年~24年司法試験考査委員(行政法)、平成23年、24年司法試験予備試験考査委員(行政法) 著書「事例に学ぶ行政訴訟入門」(民事法研究会)
事務所名:野村総合法律事務所