2013年07月16日 16:10 弁護士ドットコム
18歳未満の少女の写真を参考に描いたCG(コンピュータ・グラフィックス)のポルノ画像を販売したなどとして、岐阜市のデザイン業の男が児童ポルノ禁止法違反の疑いで、警視庁に逮捕された。CGを使った児童ポルノの摘発は全国で初めてという。
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報道によると、この男は2009年12月、自宅のパソコンで12~13歳の少女の写真などを参考にして、「CG」で児童ポルノ画像を作製。昨年12月、計34枚をまとめた画像集2冊をインターネットで島根県の男性に2940円で販売した疑いがもたれている。
児童ポルノ禁止法は、18歳未満の児童の裸体や性交などの姿態を描写したものを「児童ポルノ」と定義して、その製造や提供を禁じている。この場合、児童の「実在性」が要件とされ、写真や映像は対象となるが、漫画やアニメは対象とならないと考えられてきた。
今回の場合は、「写真を精密に模写したCG」ということだが、このような「CG」であっても、「児童ポルノ」に該当するのだろうか。今回逮捕された男は、雑誌の写真などを参考にしたとのことで、少女と直接的な接触があったわけではないようだが、ただ写真を参考にしてCGを描いただけで逮捕されてしまうのか。この問題にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。
●「実在のモデル」が存在すれば、CGでも児童ポルノになり得る
「まずは、CGが『児童ポルノ』になるかどうかですが、結論から言えば、CGを使っても児童ポルノに当たりうることになります」
――法律にはどう書いてある?
「児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)には、《『児童ポルノ』とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、・・・児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの》だと書いてあります。
法文を普通に解釈すると、児童ポルノの『描写手段』は特に限定されておらず、『視覚により認識することができる方法』であればそれに当たる可能性があるということです。
したがってCGや絵画、写真(銀塩写真・デジタル写真)、動画のような平面でも、銅像のような立体でも、児童ポルノに当たりうることになります」
――CGがダメということになれば、漫画やアニメもダメ?
「『何が児童ポルノか』という前提を、もう一度確認しましょう。
児童ポルノ禁止法では《『児童』とは、十八歳に満たない者をいう》とされ、法律の目的は児童の権利保護です。ですから、法律上の『児童ポルノ』に該当するためには、モデルとされた児童が実在することが必要です(大阪高裁H12.10.24、名古屋高裁金沢支部H14.3.28)。
CGや絵画、銅像などの場合は、モデルとなる児童が実在しなくても『児童らしき人物の姿態』を描写することができますので、『モデルになった児童が実在するかどうか』という点が問題になります。実在の児童がいなくては作れない写真やビデオとは違う点ですね」
――では、今回のCGが摘発された理由は?
「それは、今回のCGが『児童ポルノ写真の精密な模写』だったからでしょう。捜査機関は『元になった写真が明らかになっているので、その写真によってCGで描写された児童が実在することが認められる』と考えて、今回のCGが児童ポルノにあたると判断したのだと思われます」
――これまでCGを使った児童ポルノの摘発がなかった理由は?
「CGの検挙例が少ない理由は、単にCGで実在する児童を描くことが珍しいからでしょうね。
通常、CGを用いる場合は、実在の児童よりもはるかに性欲を興奮させたり刺激したりするような、『想像上の絵』が描かれることが多いです」
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会図書情報委員。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://www.okumura-tanaka-law.com/www/top.htm