2013年07月12日 16:01 弁護士ドットコム
日本では、6月に会社の株主総会が集中する傾向がある。今年も多くの会社で株主総会が開かれ、新しい人事や組織に関する提案が採決された。人事の話といえば、株主総会を伝えるニュースでときどき目にするのが「執行役員」という言葉だ。
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たとえば、通信大手・KDDIの株主総会では、株主から書面で寄せられた質問に対して、両角寛文・代表取締役執行役員副社長が回答したという。この場合、両角氏は「代表取締役」であると同時に、「執行役員」でもあり、かつ、「副社長」でもあるということだ。「代表取締役」と「副社長」はそれなりにイメージがつかめるが、「執行役員」とはどういう意味をもつのだろうか。
この「執行役員」については、会社によって、位置づけがさまざまだという。ただの「執行役員」という肩書きだけの者もいれば、専務や常務といったタイトルがつく者もいる。場合によっては、KDDIの両角氏のように取締役と兼任していることもある。
この「執行役員」という役職は、法律上、どのような意味をもっているのだろうか。取締役や部長・課長といった肩書きとは、何が違うのだろうか。会社法にくわしい河野祥多弁護士に聞いた。
●「執行役員」について、法律上は特に規定がない
――「執行役員」は法律的にどのような位置付けになるのか?
「実は、『執行役員』については、会社法で何も定められていません。部長や課長といった役職と同様に、あくまでも会社内で業務執行(現場実務)を担当する一般従業員の『リーダー』であることを示す肩書にすぎないのです」
――なぜ「執行役員」を社内に置く会社が多いのか?
「執行役員を置くことにより、取締役は実際の現場実務から距離を置いて『経営意思の決定』や『執行の監督』に専念することができます。同時に、取締役の人数も削減できます。その結果、経営判断のスピードアップや経費削減につながるというメリットがあります。1997年にソニーが執行役員を導入後、そのメリットが知られるようになり、多くの会社が執行役員制度を採用しています」
――「取締役」と「執行役員」はどう違うのか?
「会社法上、株式会社では取締役の設置が義務付けられています。執行役員のように置く・置かないを自由に決めることはできません。会社の経営方針を決定する者が必要不可欠だからです。両者は、取締役が会社の頭脳として経営方針を決定し、その決定に基づき、執行役員が現場実務を行うという役割分担をする関係にあります」
――「取締役」と「執行役員」を兼任する場合もあるようだが?
「KDDIの両角氏のように、取締役であると同時に執行役員であるということは、それだけ重責を担うキーパーソンであることをアピールする要素もあるかと思います。また、取締役として経営方針の決定に関与しつつ、執行役員として現場に入って実務も担うことで、現場を重視した経営を実践しているのだと思います」
執行役員は、「現場実務の責任者」という意味で用いられるのが一般的なようだ。内部的な肩書にすぎないのであれば、会社内の「重み」や役割をよく理解して、その立ち位置を把握する必要がありそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
河野 祥多(こうの・しょうた)弁護士
2007年に茅場町にて事務所を設立以来、個人の方の相談を受けると同時に、従業員100人以下の中小企業法務に力を入れている。最近は、ビザに関する相談も多い。土日相談、深夜相談も可能で、敷居の低い法律事務所をめざしている。
事務所名:むくの木法律事務所
事務所URL:http://www.mukunoki.info/