2013年07月11日 19:31 弁護士ドットコム
知人の子どもを無断でプールに連れ出した容疑でこのほど、埼玉県に住む29歳の看護師の男が逮捕された。
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各社報道によると、男は6月15日午後、同県内の小学5年の女子児童(10)と小学3年の弟(8)を車に乗せ、4時間にわたって、群馬県の屋内プールに連れ出した疑いが持たれている。男は姉弟やその両親と数年来の知り合いで、6月に入ってからは毎週土曜日に「次の土曜日にも来るよ。親には秘密だよ」などと口止めをして子どもたちをプールに連れて行っており、逮捕された6月22日にも一緒にプールに行く約束をしていたという。
今回、事件の詳細は明らかではない。しかし、もし「親に内緒でプールに連れてって」と知り合いの子どもにせがまれ、断り切れずに連れて行ったような場合も、連れて行った人は罪に問われるのだろうか。中川彩子弁護士に聞いた。
●子どもが同意していても「未成年者誘拐罪」は成立しうる
「今回のケースでは、未成年者誘拐罪が成立する可能性があります。なお、この場合の『誘拐』とは、だましたり誘惑したりして、未成年者を生活環境から離れさせることをいいます。
未成年者に対して誘惑的な働きかけをしたと判断されれば、この『誘拐』に当たると見なされます。今回報道されているように『次の土曜日にも来るよ。親には秘密だよ』と伝えていれば、そう判断される可能性があると思います」
――子どもたちはプールに連れて行ってもらい、よろこんでいた可能性もあるのでは?
「子どもたちが一緒に行くことに同意していても、この罪は成立します。なぜなら、未成年者誘拐罪(刑法第224条)は、未成年者自身の自由だけではなく、親などの『監護権』を守ることも保護利益に含むからです。無断で連れ出せば、未成年に対する保護者の権利である『監護権』を侵害することになります。
また、未成年者誘拐罪は、犯罪の動機や目的を問わず成立します。プールに連れて行ってあげるという目的がいくら正当であったとしても、未成年者を誘って連れ出せば、逮捕されてもやむを得ないといえるでしょう」
――では、だましたり、誘惑したりがなければ?
「だましたり誘惑したりといった行為がなければ、近所の子どもからせがまれて連れて行った場合、未成年者誘拐罪は成立しない可能性があります。
ただし、仮に罪に当たらないとしても、親に無断で子どもを連れ出すのは非常識です。また、プールで水の事故が起きたりした場合、責任を問われる可能性も大きいといえます。したがって、絶対にやめるべきでしょう」
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
中川 彩子(なかがわ・あやこ)弁護士
中小企業の企業法務や相続、離婚などの身近な法律問題を中心に幅広い案件を取り扱う。近年、特に相続・事業承継に力を入れており、円滑な相続・事業承継の実現のために地方紙連載やセミナー等で活動中。
事務所名:弁護士法人柴田・中川法律特許事務所
事務所URL:http://www.shibata-law.jp/