2013年07月05日 18:51 弁護士ドットコム
初の武道館公演も決定し、ブレイク間近と言われているアイドルグループ「℃-ute(キュート)」。そのエースである鈴木愛理さん(19)が、友人男性とのツーショットを撮影され、ファンの間で騒動となった。
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鈴木さんはこの春に大学進学。キャンパスライフを満喫している様子だったが、通学時に友人男性と一緒にバスに乗っているところを撮影され、その写真が6月20日、ツイッターにアップされた。
それを受けて、一部のファンが「彼氏発覚か?」と動揺するなど、ネットで騒ぎとなった。その後、鈴木さんがブログで「隣に男性が座った事は事実ですが、私とは知り合いという以外はなにも関係ないです」「写真以外は根も葉もない話」と交際を否定し、事態の沈静化を図った。
アイドルをはじめとする芸能人は、その行動のすべてが注目され、特に恋愛関係の情報はマスコミでも大きく報じられることが多い。しかし、今回のように、通学途中の様子を無断で撮影し、ネットで公開することは許されるのだろうか。また、マスコミが熱愛写真をスクープする場合と、一般人がネットに掲載する場合で、何か違いはあるのだろうか。芸能関係の法律問題にくわしい太田純弁護士に聞いた。
●芸能人にも「プライバシー権」が保障されている
「私生活をみだりに公開されないことは、いわゆる『プライバシー権』として、法的に認められています。また、プライバシー権が侵害されたかどうかについては、判例が示した判断基準が有名です。すなわち、公開された情報の内容が、次の4点すべてに当てはまるかどうかが問題となります。
(1)私生活上の事実だったり、それらしく受け取られたりするおそれがあること
(2)一般人の感覚では、公開されたくないこと
(3)まだ一般に知られていないこと
(4)公開されたら不快になったり、不安になるようなこと
なお、判断の目安になるのは『一般人の感覚』で、実際に公開された人がどう思ったかではありません」
―― 一般人のプライバシーが侵害された場合も、芸能人の場合も、同じ基準が使われる?
「芸能人にもプライバシー権はあります。芸能人はプライバシーを放棄していると主張する人もいますが、そういった見解は、広く支持されてはいません。
裁判所の判断としては、プライバシーが一部制限される国会議員などの公職者の場合と、サッカー選手の場合を比較して論じた東京高裁判決(平成12年12月25日)が有名です。この判決では、たとえサッカー選手が多くの人の関心の対象となっていようとも、公職者の情報が公開された場合と同列に扱うことはできないという判断が示されました」
――マスコミではなく、一般人による「プライバシー侵害」も問題になってしまう?
「情報の公開が、その人の社会的評価に影響を与えたかどうかは、プライバシー侵害があったかどうかの判断には関係がありません。だから、影響力の大きい報道機関がした場合も、単なる個人の場合も区別されないのが原則です」
——ツイートするときに、注意する点は?
「ツイートは単なる『独り言』ではありません。ネットでの表現は、簡単に他者に引用・転用され、素早く広まるようになりました。
『自分は報道機関ではない。単なる個人だから』と安易に考えると危険で、大きなトラブルに発展しかねません。そういった投稿をしたくなったら、さきほどの基準を思い出し、慎重な判断をすべきでしょう」
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
太田 純(おおた・じゅん)弁護士
訴訟事件多数(著作権、知的財産権、労働、名誉棄損等)。その他、数々のアーティストの全国ツアーに同行し、法的支援や反社会的勢力の排除に関与するほか、非常勤裁判官として執務中。
事務所名:法律特許事務所イオタ
事務所URL:http://www.iota-law.jp/