2013年06月30日 12:10 弁護士ドットコム
参院選の公示を間近にひかえ、各政党が動き出している。今回の参院選からはネット選挙が解禁されることを受け、各陣営ともFacebookやTwitterでの活動を活発化させるなど、「選挙運動のための下準備」に余念がない。
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多様化してゆく選挙運動・・・・しかし選挙の定番といえば、街中を走り回る選挙カーだろう。満面の笑顔で手を振るウグイス嬢の姿は、毎度おなじみの光景だ。だがこの選挙カー、有権者からは「うるさすぎる」という批判も多い。
声でのアピールも大事だろうが、ただ政党や候補者の名前を連呼するだけのアナウンスではあまり意味がないようにも思う。さらに閑静な住宅街に響きわたる「投票のお願い」にうんざりしているという声も多い。
小さな子どもを持つ親からの悲鳴もある。「子どものお昼寝が妨げられる」――。 うるさい選挙カーに対して、有権者は「静かにして」と要求できるのだろうか。公職選挙法にくわしい松本美樹弁護士に聞いた。
●公職選挙法上、選挙カーの「音量」の規制はない
「選挙期間前の政治活動であれ、選挙期間に入ってからの選挙運動ないし政治活動であれ、自動車上の連呼や演説のための拡声器の使用については、公職選挙法上、具体的な音量の規制などはありません」
――どれだけうるさくしても良い?
「あえて言えば、公職選挙法140条の2第2項に、選挙運動のための連呼行為をする場合は、学校、病院等の周辺では静穏を保つように努めるという趣旨の規定はあります。ただ、これはあくまで努力義務です。具体的に『○○デシベル以下』といった数値目標があるわけではありません」
――騒音防止条例など、自治体のルールは?
「各地方公共団体の定める拡声機による暴騒音の規制に関する条例では、公職選挙法の定める選挙運動や選挙における政治活動は適用除外とされています。
それ以外の政治活動による拡声機の使用も、暴力的な騒音を用いるようなものでなければ、規制の対象とはされないと解されます」
――「静かに!」とは言えない?
「選挙運動や政治活動の自由は、憲法上保障された重要な権利です。規制の範囲内で合法に行っている以上は、それに対して法的な要求として『静かにしろ』と言うのはなかなか難しいかもしれませんね。
たとえば『音量があまりに大きすぎるので小さくしてほしい』といった『要望』を出すことはもちろん可能です。ただその場合にも、怒りにまかせて選挙活動を妨害したりすると、選挙の自由妨害罪(公職選挙法225条)などにあたる可能性がありますので、気をつけましょう」
たしかに選挙は重要だ。おちついた住宅街で、大音量を出して名前を連呼する候補者たちはある意味、「投票するための重要な判断基準」を住民たちに伝えてくれているのかもしれないが・・・・。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
松本 美樹(まつもと・みき)弁護士
公職選挙法等に関する法律相談、講演、取材協力等の業務多数。
ブログ:弁護士ミキベンの 「公職選挙法と、わたし。」http://ameblo.jp/koushokusenkyohou/
事務所名:ヴァスコ・ダ・ガマ法律会計事務所