2013年06月18日 19:00 弁護士ドットコム
「すき」「あいたい」「ヤバい」――。この字面を見て何を思い浮かべるだろうか。実はこれ、クリエーターの箭内道彦(やない・みちひこ)さんが2011年に発表した一風変わった会社の名前だ。
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勤めている会社名がユニークであれば、取引先に強い印象を残すことができる営業マンもいるだろう。一方で、「社名を名乗るのは恥ずかしい」と思う社員も少なからずいるかもしれない。
日本には、個人経営の事業所も含めて、およそ410万社の企業があるが、それぞれに「社名」が付けられている。では、そもそも会社名は法律上、どんなネーミングでもよいのだろうか。会社にかんする法律問題にくわしい近藤恭子弁護士に聞いた。
●ローマ字や「&」は使えるが、「顔文字」は使えない
「法律上、商人や会社の名称を『商号』といいます(商法11条1項、会社法6条1項)。商号は、ビジネスをしていく上での顔ともいえる重要なものですが、全く自由に決められるわけではないので注意が必要です」
近藤弁護士はこのように説明する。つまり、会社の名称は「どんなものでいい」というわけではないということだ。では、具体的にどのようなルールがあるのだろうか。
「会社は登記することで法人として認められますが、その登記の際に、商号に用いることのできる符号が限定されています。たとえば、ローマ字や『&』などは使えますが、『☆』や『^_^』などの符号は使えません」
では、「\(^o^)/」も使ったらダメ?
「ダメですね・・・。また、『&』のように使ってよいものでも、字句を区切るためにのみ使用が許されています。商号の先頭や末尾に使うことはできません」
●「株式会社」や「合名会社」といった会社の種類を入れないといけない
商号、つまり会社の名称には、このような細かい決まりがあるということだ。ほかに制限はないのだろうか?
「会社の種類にしたがって、『株式会社』や『合名会社』などの文字を商号中に用いなければなりません。
これらに代えて、『K.K.』(Kabushiki Kaishaの略)や『Co,. Ltd.』(Company Limitedの略)などを用いることはできません(併記は可能です)。そのほかにも『殺人』など公序良俗に反する文字が含まれた商号は認められないという制限もあります。
さらに、これらの要件を満たし、商号として登記できたとしても、その商号が、登録された商標や周知性・著名性のある他人の商品などの表示と、同一または類似している場合などには、使用の差止めや損害賠償請求の対象となりうるので注意が必要です(商標法、不正競争防止法等)」
このように会社の名前を決める際には、あらかじめ専門家に相談し、類似商号について調査するなどして慎重に決める必要があると言えそうだ。近藤弁護士の説明をふまえて、改めて会社の名前をみてみると、新しい発見があるかもしれない。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
近藤 恭子(こんどう・きょうこ)弁護士
大阪弁護士会所属。取扱分野は、会社法、渉外法務、知的財産権、個人情報保護その他民事商事法務全般。
「依頼者のニーズをくみ取り、迅速適切な事件処理をモットーにしています」
事務所名:親和法律事務所
事務所URL:http://www.akashilaw.com/