2013年06月13日 15:21 弁護士ドットコム
フランスの国会で、同性間の結婚と、同性婚カップルが養子を迎えることを認める法案が今年4月下旬に成立した。法律は5月に発効し、男性カップルによる初の同性婚が実現している。
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一方、日本ではいまのところ、同性婚は法律上認められていない。そのため、同性カップルは、事実上の結婚生活を送る「事実婚」というスタイルを選択することになる。しかし、「正式」な夫婦ではないため、配偶者控除や相続権が得られないという問題があるようだ。
こうした制度的な恩恵を受けるために、同性カップルの中には、「養子縁組」をするという例もあるというが、やはり「結婚」を望むカップルにとって理想とはかけ離れたものだろう。では、日本でも、フランスなどのように法律を改正して「同性婚」を認めようという動きはないのだろうか。レズビアンやゲイの人権・法律問題に取り組む中川重徳弁護士に話を聞いた。
●「選択肢として『婚姻』を利用できないというのは重大な差別・人権侵害」
「同性愛も人間の『性』の自然なあり方の一つです。愛しあう二人が今後の人生を考えたとき、たまたま同性だというだけで、選択肢として『婚姻』を利用できないというのは重大な差別・人権侵害です」
中川弁護士はこのように厳しく指摘する。そのうえで、いまの日本の婚姻制度について次のような考察を加えていく。
「婚姻は『よくできたパッケージツアー』と言われます。届出をするだけで社会的に認知され、税金や社会保障で優遇されます。また万一、一方が亡くなっても相手方は自動的に財産を承継できますし、相続税も安くなります。
もちろん、いまの婚姻制度に対しては、戸籍制度そのものの問題を含めて、いろいろな議論や批判があります。しかし、同性カップルは、そもそも選択肢から排除されているのです」
このような現状を踏まえたうえで、中川弁護士は「日本国憲法の個人の尊厳(13条)、平等原則(14条)に反するものと考えます」と話す。では、なぜ日本では同性婚が認められていないのだろうか。
「婚姻を異性に限定する理由をつきつめると、『いままで男女の婚姻を想定していたから』ということしか残らないと思います。両性の本質的平等をうたった憲法24条の趣旨も、女性の権利を確立するところにあり、積極的に同性カップルの排除を定めたものとは考えられません。
日本でもオープンゲイの法律家がたくさん活躍するようになりました。同性婚が裁判で争われ、婚姻やそれに準じる制度が認められる日は遠くないと思います」
「同性婚」をめぐっては、先に法律が発効したフランス以外でも大きなうねりとなっている。英下院議会でも、イングランドとウェールズ地方で同性カップルの結婚を認める法案が賛成多数で可決している。一方で、保守派などからは反対運動も起きているようだ。遠く離れた日本でも活発な議論を期待したい。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
中川 重徳(なかがわ・しげのり)弁護士
一般民事・刑事事件のほかに原爆症認定東京訴訟、七生養護学校「こころとからだの学習」裁判、府中青年の家事件等を担当。
事務所名:諏訪の森法律事務所
事務所URL:http://www.suwanomori.net