2013年06月11日 12:40 弁護士ドットコム
スマートフォン向けゲーム「パズル&ドラゴンズ」いわゆる「パズドラ」は、1400万ダウンロードを超える大ヒットとなっている。その勢いは海外にも広がりつつあるが、中国では早速「パズドラもどき」が登場し、人気なのだという。
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モバイル向けゲームの著作権といえば、モバゲー運営会社のDeNAとグリーが争った「釣りゲーム訴訟」が記憶に新しい。これは日本の会社が同じ日本の会社を提訴したものだったが、昨今ではパズドラのように海外で「そっくりゲーム」がリリースされる場合も多い。
たとえば、中国の企業が日本企業のオンラインゲームを勝手にマネしてゲームを作り、収益を上げているような場合、どのように対抗すればいいのだろうか。もし裁判を起こすとしたら、中国の裁判所に訴えるしかないのだろうか。1980年代から中国法務に携わってきた国際弁護士で、『人治国家 中国のリアル』という著書もある黒田健二弁護士に聞いた。
●「パクリ」の証明は相当難しいが、中国で裁判を起こすしかない
「裁判は基本的に、中国で起こすしかありません。日本の判決は中国で強制力がなく、中国企業から賠償を得たり、中国企業に侵害行為を止めさせることができないからです」
中国で裁判を起こす際には、日本と同じような法律で争えるのだろうか。
「中国にも著作権法や不正競争防止法があります。それらにもとづいて、民事訴訟で損害賠償や侵害の差し止めを要求したり、違法な所得の没収や過料を行政に訴えることができます」
裁判では、具体的にどんな主張ができるのだろうか。
「まず、『ソフトウェア著作権を侵害された』という主張があり得ます。中国でも、中国の企業間で釣りゲームの著作権を巡った訴訟が起きています。しかし、実際のところ『権利侵害』を立証することは相当難しいと言えます。
その理由は、ゲームが単なる絵や音楽とは違う『複合的な著作物』だからです。たとえば、ソフトウェア著作権侵害の証拠としては、ソースコード(プログラムそのものの記述)が似ているかどうかまで確認されることがあります。つまり、ごくごく細部を変更することで、『侵害』と認定されないように回避しやすいということです。
裁判を少しでも有利に運ぶためには、中国のソフトウェア著作権登記制度を利用して、権利保有やソースコード類似性の証明に役立てることもお勧めします」
他の選択肢は?
「もう一つは、『不正競争行為だ』という主張です。たとえば、ゲーム・キャラクターの名称等がパクられ(剽窃)、本物との区別が付かなかったり、紛らわしいような場合にはこちらもありでしょう。ただ、そのためには本物(真正品)が、市場でそれなりの知名度を有している必要がありますが」
「知名度」という点でいけば、少なくともパズドラは戦えるだろう。ただ、中国でのパクリ問題を解決するには、かなり困難な道が予想されるようだ。中国は、ぜひともパクリ企業に厳正な対処をして、『パクリ大国』の汚名を返上してほしい。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
黒田 健二(くろだ・けんじ)弁護士
弁護士・ニューヨーク州弁護士・弁理士。日本経済新聞「活躍した弁護士ランキング」2012年の外国法部門2位および知的財産部門5位に選出。著書に「人治国家中国のリアル」(幻冬舎メディアコンサルティング)等。
事務所名:黒田法律事務所
事務所URL:http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/member/kuroda.html