2013年06月07日 19:00 弁護士ドットコム
多くの父母が関わることになる「PTA」。共働きが珍しくない今の時代、仕事と子育てだけでも手一杯なのに、PTA活動まで負担させられたら息つく暇もない、という人も多いだろう。
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いつのまにか全員加入が暗黙のルールになっているようだが、本来PTAは「自由入会」である。NHKで放送されたPTAに関する特集では、PTA活動の辞退を申し出た女性に「辞めるとお宅のお子さんは集団登校の班に入れません。行事の時の記念品やプレゼントも渡せません」と、担当教師から連絡があったという。
ネット上でも、PTA活動に関する悩みは多数見られる。「半強制的に会費徴収とメルアド登録をさせられた」「上の子供が重い病気のためPTA役員を断ったら、『病気を理由に断るなんてズルイ』と非難された」。
そもそも、任意加入が前提のPTA活動。こういった 教師などによる「参加の強制」は、問題ないのか。また、断ったせいでPTA活動とは関係ない不利益が発生した場合も、それを我慢しなければならないのだろうか。波多野進弁護士に聞いた。
●PTAに入会・脱退するかどうかは、保護者が自由に決めることができる
波多野弁護士は「あくまで建前だが・・・・」と断りを入れつつ、「PTAに入会・脱退するかどうかは、保護者が自由に決めることができます」と説明する。
「たとえば、大阪府の『PTA指導者の手引き』でも、PTAが任意団体であることを前提に、『学校の教育活動とPTAの活動は当然別個のものであり、区別されなければならない』ということが示されています。
これは、憲法21条で、団体を結成したり、そこに加入したりする『結社の自由』が保障されており、このなかには、『団体に加入しない自由(結社しない自由)』も含まれているからです」
つまり、憲法上の観点からは、PTAに加入しない自由が認められているということだ。
●事実上、PTAに参加を強制する行為は憲法21条に反する
では、番組で取り上げられた、PTA活動を辞退したことで、担任の教師から「子どもは集団登校の班に入れない」という連絡があった保護者のケースはどう考えれば良いのだろうか。
「子どもを学校に預けている保護者の立場からすれば、このような教師の連絡に抵抗することは極めて困難でしょう。したがって、事実上、PTAに参加することを余儀なくされると評価することができ、憲法21条の趣旨に反する行為と思われます。
そもそも集団登校は、子どもの安全を守る目的で行われているはずで、保護者がPTA活動をしているかどうかで集団登校の班に入ることができるかどうかを決めること自体、まちがいと考えます」
また、「子どもには行事の時の記念品やプレゼントを渡せない」という連絡がきたということは、どう考えればよいのだろうか。
「このような行為は、保護者のPTA加入の有無によって、子どもに不利益を及ぼすものであり、やはり同様の問題があると、言わざるを得ないでしょう。
仮に、これらの記念品やプレゼントの代金・費用のすべてが、PTA会費から支出されているなら、この担当教師の連絡などが正当化されるという意見もありうるかもしれません。
しかし、ことさらPTAに加入していない保護者の子どもだけに配布しないことがわかる形で、記念品やプレゼントを配布することも、PTAへの参加の強制につながりかねないと評価されるでしょう」
PTAへの参加強制に対しては、波多野弁護士が言うような反論をして、拒否することもできるということだろう。子どもに不利益が及ぶ可能性を考えると、実際に強い態度をとるのは難しいかもしれないが、このような「理屈」を頭の片隅に置いておいてもよいのではないか。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
波多野 進(はたの・すすむ)弁護士
弁護士登録以来10年以上、過労死・過労自殺(自死)案件(労災・労災民事賠償)や解雇や残業代にまつわる事件に数多く取り組んできている。
事務所名:同心法律事務所
事務所URL:http://komon-law.com