2013年06月04日 17:01 弁護士ドットコム
女性客室乗務員(CA)の「お化粧」をめぐり、トルコで議論が巻き起こった。発端は5月初旬、トルコ航空が客室乗務員の化粧に関する新規則を定めると発表したことだ。
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報道によれば、派手な色のネイルや赤い口紅は禁止。紫色など相手にきつい印象を与えるメークも制限されると伝えられた。しかし国内で批判する声が高まったため、新規則は撤回されたのだという。
このような化粧の制限が、もし日本の企業でも行われたら、どうだろうか。女性の従業員に対して、企業が具体的な「化粧の方法」を指示しても問題ないのか。セクハラや男女差別にあたる可能性はないだろうか。高木由美子弁護士に聞いた。
●従業員が守るべき「就業規則」にも限界がある
「企業は、社内環境を整えたり、顧客に与えるイメージを維持するなど、事業を円滑に運営するために、従業員が守るべきルールを就業規則等で定め、従業員に守らせることできます」
高木弁護士はこのように、就業規則の必要性について述べる。しかし、どんなことでも従業員に要求できるわけではないという。
「企業のこのような権限は、あくまで労働契約にもとづき、『事業を円滑に運営すること』を目的としているため、やみくもに従業員にルールを強いることはできません。特に、従業員の『表現の自由』にかかわる問題は、その企業の円滑な運営上必要で、かつ、その制限が合理的な限度に留まるようにしなければなりません」
では、化粧の方法はどうなのだろうか。
「具体的な『化粧の方法』を従業員に指示することは、企業が容姿にかんする『表現の自由』に関与することになります」
化粧も「表現」の一つということだが、「表現の自由」だからといっても、すべて従業員の思い通りというわけにもいかないだろう。高木弁護士も、場合によっては、化粧の方法に制約が加えられる可能性があることを認める。
「企業によっては、サービス業で接客を業務とする従業員に対して、企業のイメージとは異なる派手な化粧を禁止することが認められる可能性があります」
では、接客業ではない従業員の場合はどうなのか。
「同じサービス業でも、内勤で接客がない従業員に対して、化粧を規制することは、企業の円滑な運営上必要がないとして、認められないでしょう。また、企業のイメージ維持のためでも、女性だけに化粧規制することは、民法で規定されている男女平等の原則に反する可能性があります。したがって、男性に対しても、身だしなみ等のルールを設ける必要があります」
どうやら、会社が接客対応するわけではない内勤の女性に対して、化粧について口出しすることはNGなようだ。ただ、化粧によって、人に与える印象が大きく変わるのは事実だ。「派手な化粧」をして、上司の心証が悪くなっても、それは自己責任ということだろう。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
高木 由美子(たかぎ・ゆみこ)弁護士
第一東京弁護士会所属弁護士。カリフォルニア州弁護士
事務所名:さつき法律事務所
事務所URL:http://www.satsukilaw.com/