2013年05月31日 18:20 弁護士ドットコム
体罰問題をきっかけに不祥事があいつぐ全日本柔道連盟。今度は70代の理事が30代の女子選手に抱きついたり、キスを迫ったりするセクハラをしていた事実が発覚し、辞表を提出した。この老人は東京都柔道連盟の会長も務める人物だったが、こちらも辞任に追い込まれている。
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会社でいえば、上司によるセクハラだ。昔に比べれば意識改革が進んでいるものの、依然なくなる気配はない。その内容は、職場で上司に身体を触られた、飲み会でキスされた、など様々だが、警察に訴えようとする前に相手方から示談にしてほしい、と言われることも結構あるようだ。
もしセクハラにあってしまった場合、どのように対応するのがいいのだろうか。示談を提案されたときには、応じるべきなのか。刑事事件の担当経験も豊富な大和幸四郎弁護士に聞いた。
●示談を提案してくる相手は、弁護士に相談している可能性がある
「当然のことながら、セクハラは人格権を侵害する違法な行為です。個人的にも許せないと思っています」
このように大和弁護士はキッパリ言う。
「法律上は、労働契約法5条で、生命・身体等の安全の保護が求められています。 また、男女雇用機会均等法11条において、職場における性的な言動による不利益や就業環境の侵害がなされないように配慮しています」
それでも残念ながら、セクハラがなくならないのが実情だ。「弁護士でも、セクハラをして問題になる人がときどきいますね」と大和弁護士も口にする。セクハラにあってしまった場合、会社に懲戒処分を求めたり、警察に告訴するということも考えられるだろう。だが、訴える前に、示談を提案された場合はどうしたらいいのか。
「当たり前のことですが、内容をよく検討してください。すこしでも疑問があれば、プロである弁護士に相談することをお勧めします。なぜなら、相手は弁護士に相談してから示談を提案していることが多いからです。また、示談を提案されるということは、これまであまり経験がない方が多いでしょうから、弁護士に相談しておいたほうが安心できるのではないでしょうか」
このように述べたうえで、大和弁護士は「提案内容に納得がいけば、示談してもかわないと思います」と話す。「逆に、納得がいかなければ、こちら側の要求を提示すべきです。そして相手が同意すれば、示談しても良いでしょう」
キーワードは「納得」できるかどうかだ。しかし、ケースによっては、相手の言うことに耳を貸す気になれない場合もあるだろう。
「相手のことを絶対に許せない場合や相手が納得いかない回答しない場合、誠実でない場合などは、強制わいせつ罪(刑法176条)で告訴をすることも考えられます。相手は自分で悪い種をまいてしまったので、刑事告訴されてもやむを得ないでしょう」
このように説明しながら、「この記事を読んで、セクハラが少なくなってくれることを願っています」と大和弁護士はしめくくった。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)弁護士
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・消費者問題対策委員会委員長。佐賀大学経済学部非常勤講師。借金問題、刑事・離婚事件など実績多数。元「西鉄高速バスジャック事件」付添人。
事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/