2013年05月30日 21:31 弁護士ドットコム
東日本大震災から2年が過ぎた。被災地は復興に向けて、少しずつ歩み続けているが、まだまだ多くの課題に直面している。そんな被災地の復興・復旧事業を影で支えているのは、全国から集まった労働者たちだ。ところが、がれき処理などに携わったにも関わらず、賃金が支払われていないという事例が相次いで報告されている。
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河北新報によると、九州からやってきた50代のある男性は、石巻市で被災建物の解体作業などに関わったが、会社が約束通りの賃金を支払わなかったために、所持金が底をつき、食事を満足に取ることができなくなった。男性は体調を崩して入院したという。
このように、震災復興・復旧事業関連の賃金が支払われなかったら、どうすればよいのだろうか。また、復興・復旧事業に関わる労働者が、賃金トラブルなどに巻き込まれないよう注意すべきことは何だろうか。宮城県で復興支援に取り組む菊地修弁護士に聞いた。
●賃金の支払いを請求し続けても、ラチが明かない場合は「法テラス」に相談
「賃金未払いがあった場合は、決して諦めずに、雇用主(事業者)に賃金を支払うように請求し続けてください。その際、請求は書面でおこなってください」
菊地弁護士はこのようにアドバイスする。その上で、「『一人では不安』ということもありますから、労働組合(「◯◯ユニオン」等)に相談して、一緒に交渉をやってもらうと良いでしょう」と付け加える。
それでも、ラチが明かなかったら、どうすればよいのだろうか。
「そのような場合は、弁護士に相談・依頼して、示談交渉や労働審判申立などをおこなうことになります。このとき、弁護士費用は心配する必要はありません。法テラスでは、弁護士費用などを支払う余裕がない方に対して、その費用を立て替える制度があります」
「法テラス」というのは、日本司法支援センターの愛称で、国によって設立された法的トラブル解決のための総合案内所だ。無料の法律相談や弁護士費用の立替えも行っているので、困ったときにまず相談してみる先として覚えておくとよいだろう。全国各地に支部があるほか、電話での相談も受け付けているので、どこからでもアクセスが可能だ。
●「雇用主が『労働条件』の明示を拒んだら、そこで働くことはやめるべし」
では、復興・復旧事業に関わる労働者が、賃金トラブルなどに巻き込まれないように注意すべきポイントは何だろうか。
「まずは、雇われたときに雇用主に対し、賃金や労働時間などの『労働条件』を書面で明示させることです。雇用主は、労働者を雇用したとき、労働条件を明示する義務が定められており、これに違反すると罰則があります。
もし雇用主がこの点を拒否したり、またはあいまいにするようであれば、そもそもそこで働くことはやめるべきでしょう」
被災地で職を求める人は今後もあとをたたないだろう。そのような人たちを喰いものにする業者は決して許されるべきではない。菊地弁護士がアドバイスしているように、あきらめずに賃金を請求し、それでもダメなら、法テラスなどの専門機関に相談することをすすめたい。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
菊地 修(きくち・おさむ)弁護士
宮城県仙台市出身。東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター事務局長。
常に弱者救済の立場で活動しており、とくに東日本大震災で被災された方々の法的救済と被災者・被災地が主体の復旧・復興に全力で取り組んでいる。
事務所名:一番町法律事務所
事務所URL:http://www.1-lawyers.com/