2013年05月27日 15:50 弁護士ドットコム
日本でいえば、「こどもの日」を商標として登録するようなものか――。米のウォルト・ディズニー社が、メキシコや中南米の伝統的な祝日である「死者の日」について、商標登録のために出願したところ、「文化は売り物ではない」と非難が殺到。5月12日に出願の撤回を発表する事態となった。
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CNNなどによると、ディズニーの子会社ピクサーは「死者の日」をテーマにした映画を今秋公開予定で、スペイン語で死者の日を意味する「Dia de los muertos」について、米特許商標庁に商標登録の出願をしていた。
商標を巡るトラブルは、国内でも度々ニュースになっている。2003年には、阪神タイガースと無関係の男性が「阪神優勝」という商標を登録して問題化(後に無効)。また05年には、2ちゃんねるで長く親しまれてきたアスキーアートを基にしたキャラ「のまネコ」が商標登録申請され、騒動となった(後に取り下げ)。
無関係の人の「阪神優勝」登録がまずいのはわかる。おそらく「こどもの日」もダメだろう。だが実際には常識だけでは判断できないケースも多々ありそうだ。商標登録の際に、参照しておくべきガイドラインはあるのか。作花知志弁護士に聞いた。
●一般的な言葉は、そのままでは「商標」にできない可能性が高い
「まず、商標とは『商品』の『標識』となるマークです。少しかみ砕いて言うと、商品に付いている『○○』というマークを見れば、『これはあの会社が製造したあの商品だ』とわかるものですね。これを『商標の識別機能』といいますが、そういう役割を果たして、はじめて単なるマークが『商標』として保護されるのです」
——「こどもの日」はどうか。
「もし、商品に『こどもの日』というマークを付けても、『あの会社が製造したあの商品だ」と認識・識別してもらうのは難しいですね。単に『こどもの日向けの商品があるのだな』と思われるだけでしょう。
つまり、『こどもの日』のような、一般的・日常的に使用されている言葉は、マークとして商標にしても『識別機能』が働きにくいと言えます。その意味で『こどもの日』は、商標登録が認められない可能性が高いのです。
ところが『こどもの日○○』のように、他の言葉が加われば、他の商品との識別機能が生じて、商標登録が認められる可能性も出てきます」
——新しく商標を考えるときには、どうすれば良いのか?
「特許庁の電子図書館での検索が参考になるでしょう。ただし、商標として認められるかどうかというのは、このように微妙な問題で、専門家の判断が不可欠でしょう。トラブルを避けるためにも、弁理士や弁理士資格を有する弁護士など、専門家に相談をされることをお勧めします」
試しに検索してみると、「こどもの日」は無かったが、「ひなまつり」は既にある有名なメーカーによって商標登録がなされていた。確かにこれは、判断の難しい微妙な問題と言えそうだ・・・・。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連裁判員本部、日弁連国際人権問題委員会、 日本航空宇宙学会、国際人権法学会などに所属
弁理士資格も有している
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/