2013年05月26日 14:50 弁護士ドットコム
和歌山県警の捜査2課長を務める警視が、元同僚の女性警察官と不倫関係を続けていたことが判明した。県警が「信用を損ねた」として懲戒処分を検討していたところ、警視は5月13日に退職願を提出したという。
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報道によると、警視は別の部署に所属していたときに部下の女性警察官と交際。捜査2課長に着任した後も、勤務時間中に女性警察官の自宅を訪れていたとのことで、地方公務員法の職務専念義務に違反する可能性があるとされる。
今回は警察官の「内部不倫」が問題になった形だが、民間企業の場合はどうなのか。同僚と不倫した場合は、会社から懲戒処分を受けても仕方ないのだろうか。それとも、「恋愛は個人の自由」ということで、会社が問題にするのはおかしいのだろうか。山田長正弁護士に聞いた。
●不倫しただけで、会社に処分されるわけではない
「不倫行為というのは、夫婦関係が既に破綻している等の特別な事情がない限り、民法上は違法とされていますし、離婚の理由になり得ます(民法770条1項1号)。よって、不貞行為は、法律上はもちろん、倫理的にも社会的にも許されない行為です。
しかし、だからといって、不貞行為が社内の処分理由になるか否かは別の話です。すなわち、不貞行為はあくまで私生活上の問題ですので、直ちに処分の理由とすることはできません。
企業が処分の理由とできるのは、企業における秩序が乱れる等、企業運営に具体的な支障が発生する場合に限られます。よって、不貞行為を行ったとしても、直ちに企業運営に具体的な支障が発生するとは言えないため、原則として処分を行うことはできません」
つまり、ただ「社内不倫」が発覚しただけでは、会社はその社員を処分できないというわけだ。しかし例外的に、不倫が社内処分につながることがあるという。どんな場合なのか、山田弁護士は次のように説明する。
「企業が処分を行うことができるのは、不貞行為により、企業運営に具体的な支障が発生した場合です。
たとえば、グループで仕事を行うような状況で、不貞行為を行っている者同士しかコミュニケーションを取らず、他のメンバーを蔑ろにしたために、業務が円滑に遂行されない場合や、職務時間中に不貞行為の相手方と交際を行う場合が考えられます」
不倫はもちろん推奨されるべき行為ではないが、そのような関係になってしまう人が少なくないのが現実だ。仮に不倫状態になってしまった場合は、せめて会社の業務に影響が出ないように注意したほうがいいといえるかもしれない。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
山田 長正(やまだ・ながまさ)弁護士
山田総合法律事務所 パートナー弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。
事務所名:山田総合法律事務所
事務所URL:http://www.yamadasogo.jp/