2013年05月25日 18:30 弁護士ドットコム
俳優の反町隆史さん、松嶋菜々子さん夫妻が飼っていたドーベルマンに噛まれたのが原因で、同じマンションの住人が転居し、損害を受けた――そう主張するマンションの管理会社が、反町さん夫妻に賠償を求めていた裁判の判決が5月14日、東京地裁であった。報道によると、裁判所は「飼い犬を適切に管理しなかった」と夫妻の過失を認め、管理会社に385万円を支払うよう命じたという。
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ペットは様々なトラブルを起こす。噛みついて怪我をさせたり、隣人宅に侵入して果実を食べたり、塀に小便をかけたり、延々と夜中に鳴き続けたり・・・・。誰かに迷惑をかけるリスクは常にあるが、相手が動物なだけに「言って聞かせる」というのも限界があるだろう。
今回の判決、ペットの飼い主にとっては他人事ではない。385万円もの賠償を命じられるケースはそうそうないとは思うが・・・・。こういったペットの不始末に対して、飼い主はどこまで責任を負わなければいけないのか。飼い主が持つべき覚悟について、渋谷寛弁護士に聞いた。
●飼い主の損害賠償が免責されることは「めったにない」
「ペットの飼い主には法律上、重い責任が課せられています。ペットが他人に迷惑をかけたり損害を与えたときには、原則としてその損害を賠償する責任があります(民法718条)。飼い犬が散歩中に他人に噛み付いて怪我をさせてしまったときも、原則としてその治療費などを賠償しなくてはならなくなります。
飼い主として相当の注意を行っていたと認められれば、免責もあります(同条1項但書)が、これが認められる事はめったにありません」
つまりは、ペットの不始末は、基本的に飼い主が賠償しなければならないということだ。では、その範囲はどうなるのだろうか。
「賠償しなければならない損害の範囲は、『相当な因果関係のあるもの』とされています。典型的なのは、噛まれた傷の治療費や通院慰謝料のように、直接的な被害者に対して支払うケースです。
一方、今回は、ペットに噛まれたことが原因で借主が退去してしまい、マンションの管理会社が間接的に損害を被ったという特殊なケースです。
直接噛まれた被害者ではない者の請求を認めたという意味では珍しいと言えるでしょう。飼い主として、ペットが与えた損害のうちどこまでを賠償しなければならないかを考えるにあたって、とても参考になる判例です」
関係者が有名人だったこともあり、大きな話題になった今回の事件。全ての飼い主やこれからペットを飼おうと思っている人たちにとって、心にとどめておくべき教訓となったのではないだろうか。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
渋谷 寛(しぶや・ひろし)弁護士
1997年に渋谷総合法律事務所開設。ペットに関する訴訟事件について多く取り扱う。ペット法学会事務局次長も務める。
事務所名:渋谷総合法律事務所
事務所URL:http://www.s-lawoffice.jp/contents_01.html