2013年05月24日 14:51 弁護士ドットコム
昼時になると、都心のオフィス街にワゴン車などで次々とやってくる弁当の路上販売業者。価格が500円前後とお手軽で、サラリーマンやOLには嬉しいサービスだが、ここに来て路上販売の規制を強化しようという動きが出ている。
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東京都は4月下旬、弁当の路上販売の実態調査と衛生問題に関する検討会を発足させた。日光の当たる場所での販売を衛生面で心配する声があり、実際、中央区が2012年に実施した調査では、路上販売の弁当の約8割から基準値を超える細菌が検出された。弁当の路上販売は届出制だが、最近は無届の業者も増えているという。
たしかに、消費者保護という観点からすれば何らかの新たな規制を導入するのは仕方ないかも知れないが、路上販売が全くなくなってしまうというのも寂しい。衛生面に問題のある弁当をなくすために、新しいルールが必要なのだろうか。また、もし制限をするとすれば、どんな規制が「落としどころ」になるのだろうか。西新橋のオフィス街に事務所を構える秋山亘弁護士に聞いた。
●悪質業者排除のためには、「許可制」への移行もやむを得ない
――問題のある業者を排除するために、新たな規制が必要なのか。
「実際に問題のある弁当が販売されているということであれば、規制強化もやむなしと考えます。現在の法律では、弁当の路上販売は『届出制』となっています。届出制だと業者は『ここで弁当を販売します』と、自治体に書類を届け出れば販売ができます。飲食店などと違って、『営業許可』を取る必要はありません。
そのため万一、食中毒など衛生面の事故が発生した場合も、自治体は営業許可取消などの『行政処分』ができません。そのため、衛生上問題のある弁当を販売する悪質業者がいたとしても、行政としては取り締まれないという問題点があるのです」
――では、今後の規制はどうあるべき?
「一方、弁当の路上販売自体を一律に禁止することは、『過剰な規制』と言えます。規制は、安価で美味しい弁当を購入する自由や、販売業者の営業の自由を奪うことにもなりますから、『必要かつ合理的な範囲を超えてはならない』と考えられます。
ルールを無視する悪質業者を排除するためには、『最低限の要件』を課して、それをクリアした業者だけに営業許可を与える。問題が起きれば許可を取り消す。そういう『許可制』への移行が合理的と言えるのではないでしょうか。具体的には今後、都や有識者の審議会などが話し合っていくことになるのではないでしょうか」
秋山弁護士によれば、現状でも、弁当での食中毒事故があった場合には、販売業者は損害賠償責任を負う。また悪質な場合には、刑事罰の対象になる可能性もあるという。いまでも業者には、衛生面について細心の注意を払うことが求められている。
そのうえでさらに、路上販売に対する規制を設けるべきなのか。その是非や内容については、今後、様々な議論がなされると想定されるが、そもそも弁当の路上販売がどこで、どのように行われて、どのような問題が生じているのか、その「実態」を正しく把握することが先決だ。行政には、正確な実態把握にもとづいて、適切な対策をとることが望まれている。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
秋山 亘(あきやま・とおる)弁護士
民事事件全般(企業法務、不動産事件、労働問題、各種損害賠償請求事件等)及び刑事事件を中心に業務を行っている。日弁連人権擁護委員会第5部会(精神的自由)委員、日弁連報道と人権に関する調査・研究特別部会員。
事務所名:三羽総合法律事務所