2013年05月20日 22:10 弁護士ドットコム
夫婦なのに全く会話がない――。幸せな家庭を夢見て結婚したものの、日々の生活や仕事に追わて時間がとれなくなり、いつしか夫婦のコミュニケーションがなくなった。そういった情景に、心当たりのある人も多いのではないだろうか。
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先日放送された人気バラエティ番組『探偵ナイトスクープ』(朝日放送)には、「父親が母親の呼びかけに全く答えようとせず、23年間まともに会話が成立したことが無い」という青年が登場した。「できることなら両親が仲良く会話する姿を見たい」という青年の訴えを受けた”探偵”の働きかけで、この夫婦がお互い心を開いて会話を交わす。番組ではそんな感動的なストーリーが展開され、ネットでも大きな反響があった。
「感動ストーリー」の一方で、視聴者からは「23年間も無視って、精神的なDV(夫婦間暴力)では?」と、疑問視する声も出たようだ。確かに話しかけてもずっと返事がないのは辛いだろう。23年はともかくとして、長期にわたって夫婦間に会話が無い状態が続いた場合、それを「精神的DV」と認定したり、慰謝料の支払いを認めたケースはあるのだろうか。堀井亜生弁護士に聞いた
●夫婦の会話が長期間ないことを立証できれば、「離婚」が認められる
「これほどまで長期間にわたり会話がない事例というのはきわめてまれなケースだと思います。これを『DV』と呼ぶかどうかは判断しかねますが、もし実際に23年間、夫婦の会話が一切なく、それを立証できる場合には、離婚が認められるでしょう。
通常、離婚が認められる事例としては、浮気、暴力、借金といったケースがよく挙げられます。『夫婦としてのコミュニケーションがとれない』というケースは、これらの場合と同様に、『婚姻関係を継続しがたい重大な事情』として、離婚が認められます。また、会話がなくなった原因が一方にある場合には、原因となった側が慰謝料を払わなければならない場合もあるでしょう」
――今回の番組のように、感動的な「和解」に至るチャンスもあるのでは?
「今回、番組に登場した夫婦は、23年の間、いわゆる『会話』はないものの、妻は夫に明るく話しかけていました。子供達も明るく育っており、『家族としてのコミュニケーションはとれている』状況だったと言えるのではないでしょうか」
また、夫は『子ども中心の妻に放ったらかしにされ、すねていただけだったが、その後は引っ込みが付かなくなってしまった。妻のことは大好きで、ずっと話したかった』と話していました。また、妻も、その夫の気持ちを感じ取っていたとのこと。だからこそ、まともに会話をせずとも、夫婦関係が続けられたのでしょう」
――では、この家族は例外的?
「そうですね。きわめて珍しいケースでしょう。下手に会話のある夫婦よりもよほど仲が良かったわけですから、この家庭では関係が修復可能だったでしょうが・・・・。一般的には妻が離婚を決意すれば、離婚が認められるでしょうね」
確かに、常識的に考えて、そんな「神対応」をしてくれるのはラノベのヒロインぐらいだろう。「信じてるから・・・・」などといって痛い目に遭う前に、関係修復に全力を挙げたほうがよさそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
堀井 亜生(ほりい・あおい)弁護士
弁護士法人フラクタル法律事務所 代表弁護士
第一東京弁護士会所属 「ホンマでっかTV!?」「とくダネ!」「やじうまテレビ!」「ノンストップ!」などメディアに多数出演。著書に「フラクタル法律事務所の離婚カウンセリング~答えが出るノート~」がある。
事務所名:弁護士法人フラクタル法律事務所
事務所URL:http://www.fractal-nikotama.com/