2013年05月19日 13:40 弁護士ドットコム
米グーグルが開発中のメガネ型インターネット端末「グーグルグラス」を巡って、国内外で議論が起きている。
【関連記事:「投稿動画」の再生回数を水増し 「クリック屋」は違法でないのか?】
グーグルグラスは、メガネのようにかけ、音声や指で操作する小型の通信端末だ。レンズを通して映る景色にインターネット上の情報を重ねて表示できるほか、搭載する小型カメラで自分の見ている景色を撮影することもできる。
まるでSF映画に出てきそうな革新的な「ガジェット」だが、一方で「自動車の運転中に使うと危険だ」といった指摘もある。CNNによると、米ウエストバージニア州議会には、こういったメガネ型端末を運転中に使えなくする州法改正案が提出されたという。
「拒否反応」はそれだけではない。瞬き一つでカメラ撮影ができるグーグルグラス用のアプリが登場しており、「いつ撮っているかわからない。簡単に盗撮できてしまう」といった声も出ている。
一般への発売はまだしばらく先のようだが、グーグルグラスは大きな反響を呼んでおり、大ヒットの可能性も指摘されている。もしそうなれば、スマートフォンがあっという間に普及したように、近い将来、誰もが気軽に使うアイテムになるかもしれない。そのときのために、日本でもメガネ型端末に関する法律について、議論しておくべきではないのか。弁護士・弁理士で、ガジェットにも造形の深い岩原義則弁護士に意見を聞いた。
●見た目のインパクトは強いが、新たな規制は不要
――運転中の使用について、新たな規制が必要?
「道路交通法70条には、安全運転義務が規定されています。これは運転中の携帯電話操作や仮面の着用など、かなり幅広いケースに適用される包括的な条項です。グーグルグラスは発表資料を見る限り、視界が大きく制限されるようなことはなさそうですが、もし運転中にネットを見ていれば注意が削がれる要素は十分にあります。安全運転義務違反については、警察官が緊急対応措置をとれますから、現在のルールでも『運転中はダメ』といわれる可能性が高いと思います」
――では、盗撮については?
「見た目で警戒される可能性はありますが、事実上、スマートフォンと同じ扱いで良いのではないでしょうか。通常、都道府県の迷惑防止条例では『写真機等』による下着等の撮影が禁止されています。グーグルグラスもスマートフォン等のカメラと同じく、これに該当すると考えられます。
スマートフォンは携帯電話と外観が似ていますが、グーグルグラスは見た目のインパクトがかなり違います。そのためスマートフォンのようにすんなりと社会に受け入れられるかは不明で、法的に問題にされる可能性は高いとはいえます。
ただ、そのためだけに法律的な整備が必要かというとどうか。具体的に問題が起きてみないと分からない部分もあるでしょうが、多くの場合は既存の法律により対処が可能と考えられます」
――つまり、見た目のインパクトに反して、実質的にはそれほど問題とはならなそう?
「ええ。そう思います。素直にいえば『自分も欲しい』ですしね(笑)」
現在、グーグルグラスは、一般発売にさきがけて、開発者向けに試験版が配布されており、実際に着用した人のレポート記事がIT系のメディアに掲載されるようになってきた。グーグル自身も、グーグルグラスを装着するとどんなことができるのかを紹介した動画を公開している。将来どんなトラブルが起きそうなのかを知るためにも、そんなグーグルグラスの記事や動画に目を通しておくといいかもしれない。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
岩原 義則(いわはら・よしのり)弁護士
弁護士・弁理士。大阪弁護士会・知的財産委員会副委員長
事務所名:溝上法律特許事務所
事務所URL:http://www.mizogami.gr.jp/