2013年05月17日 18:20 弁護士ドットコム
風疹が過去最悪のペースで広まっている。国立感染症研究所によると、今年の患者数は5月1日までで、既に昨年1年間の2倍以上となる5400人超。患者の9割が成人で、男性が女性の約3.5倍となっている。患者は風疹ワクチンが「定期接種」に含まれていなかった時期に子ども時代を過ごした世代に多く、男性は20~40代、女性は20代が中心だという。
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中でも、免疫のない女性が妊娠初期に風疹ウイルスに感染すると、赤ちゃんが「先天性風疹症候群」として障がいを持って生まれる可能性がある。そのため、厚労省は妊婦を守る観点から、(1)妊婦の夫、子どもや同居家族(2)妊娠希望者や妊娠する可能性の高い人(3)産褥早期(出産後)の女性のうち、抗体がない人に対して、任意での予防接種を呼びかけている。
だが、全てのワクチン接種はリスクも伴う。風疹ワクチンは副作用が少なく、比較的安全とされているが、ごく稀にショック、アナフィラキシー様症状、全身のじんましん等の重大な副作用が出ることもある。もし、大人が風疹ワクチンを接種し、このような健康被害を受けた場合、国や医療機関などに補償を請求できるのだろうか。坂野智憲弁護士に聞いた。
●風疹ワクチンの被害は、補償の対象
「結論から言うと、風疹ワクチンによる健康被害と認定された場合は、一定の補償が受けられます」。坂野弁護士はズバリ、そう回答する。
ただ、補償の内容は、どんな形でワクチン接種を受けたか、具体的には「法定接種」か「任意接種」かによって異なるという。それぞれどんな違いがあるのか。
「法定接種は、生後12カ月~24カ月までの間に1回、小学校就学前の1年間に1回の計2回行われていて、定期接種とも呼ばれます。もしこの接種で病気や障害になったり、死亡したと厚生大臣が認めた場合、『予防接種法』に基づいた補償が受けられます。その範囲は、(1)医療費及び医療手当(2)障害児養育年金(3)障害年金(4)死亡一時金(5)葬祭料です。例えば、障害年金は1級年額486万円、2級年額388万円、3級年額291万6000円、死亡一時金は4250万円、葬祭料は20万1000円となっています」
では、任意接種とは?
「法定接種以外の時期に、希望者が任意に受けるワクチン接種です。この場合は予防接種法ではなく、『医薬品医療機器総合機構法』による副作用救済給付を受けられます。こちらは給付の内容が違い、例えば障害年金は1級年額270万円、2級年額216万円、死亡の場合は死亡一時金ではなく10年間を限度とする遺族年金年額236万1600円と、遺族一時金708万4800円が支払われます」
任意で受けたとしても、万一の際の補償があるのは何よりだ。患者の多い世代の人などは、まずは検査で抗体の有無を確認してみるのが良いかもしれない。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
坂野 智憲(さかの・とものり)弁護士
仙台弁護士会会員、宮城県公務災害審査会会長、宮城県情報公開審査会委員、仙台医療問題研究会代表。医療事故・介護事故・交通事故を主な取扱い分野としている。
事務所名:坂野法律事務所
事務所URL:http://www5b.biglobe.ne.jp/~j-sakano/